山崎豊子『運命の人』(3)(4)
灼熱の8月に、ちょうど読了いたしました。運命の人(3)価格:1,600円(税込、送料別)運命の人(4)価格:1,600円(税込、送料別)1巻、2巻に続き、図書館から。極東軍事裁判のリアルな描写が印象的だった「二つの祖国」的な展開を予想していましたが、法廷闘争の描写は3巻で終わってしまい、4巻は、舞台がほとんどすべて沖縄です。(おそらく完全にフィクションですね)弓成は、沖縄へたどり着きます。そして、暖かい沖縄の方々に助けられて、一度捨てたペンをもう一度執るのです。そこで、彼が出逢ったライフワークは、「沖縄の悲劇」でした。沖縄…。じつは、一度も行ったことがなく、ビーチリゾートのイメージがぼんやりあるくらいで、太平洋戦争で唯一地上戦がおこなわれたとか、普天間基地問題とか聞いても、まったくピンとこなかったのですが、4巻を読んで、…本当に、自分の無知を恥じいりました。鉄の暴風。ひめゆり学徒隊。集団自決。基地の島。少女事件。悲惨、という言葉では足りない、ただただ悲しく、苦しい…。沖縄だけを踏み台にして、安穏と暮らしてきたという記憶が、しっかりわたしの遺伝子にも、刻み込まれているのでしょう。密約事件は、弓成を沖縄へ連れていくためのきっかけに過ぎず、本当に山崎豊子が書きたかったのは、この4巻だったのではないかと邪推しました。それにしても、ちょっと距離が離れていると、途端に遠い国の出来事のように、無関心になってしまうのはなぜなのか。沖縄の基地問題もしかり、六ヶ所村の問題もしかり。アンテナをしっかり立てて生きよ!と言われたような気がします。