ころり、ころり。
あめ玉を舐めるのが苦手。きっと、私がすごくせっかちな性格だから。口の中にほおりこんで、あまぁい味が広がるとすぐに、がりり、がりり、と噛み砕いてしまってねちゃりとしたあめ玉のかけらが、奥歯に絡みつく。奥歯の虫歯をずっとほったらかしだから、ずいぶんと、それが痛い。だから、私は、あめ玉が小さい頃からあまり好きではないのだけれど。頬のうしろに、ころりと転がす。舌の上をつたって、反対の頬のうしろへ。ころり、ころり。これだけは、特別。ずっと口の中で転がして、噛み砕いたりなんかしない。ときどき、奥歯でそおっと噛んで、でも、噛み砕かない。だって、これだけは、特別。彼からもらったものだもん。口の中いっぱいに広がる味を、ずっとずっと確かめておきたい。ずっと無くなって欲しくない。ころり、ころり。口の中に、いっぱいの唾液でくるんで。そして、ティッシュにそっと取り出す。口から出して。唾液でティッシュが滲んできて、だから、もう一枚だけその下にティッシュを敷いて机の上に置く。いっぺんに食べちゃうなんてもったいないもん。自然にほころんでくる顔。きっと、私、いまニヤニヤしてる。ティッシュの上の彼の眼球。そっと、指で触れて。ぶより、とした感触がなんだかとても愛おしい。ああ、大好きな彼の、眼球。明日も、大事に味わうんだ。机の引き出しの奥に、しまいながら、私の顔はにやけたまま。