上田彩子『ヒトのココロの不思議がわかる ココロ学入門』
~ディスカヴァー・トゥエンティワン、2012年~
上田彩子先生は2022年度現在、日本女子大学人間社会学部心理学科の准教授。研究者兼漫画家ということで、今回紹介する本書も、マンガで分かりやすく心理学に入門できる1冊です。
本書の構成は次のとおりです。
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はじめに
1 ヒトはそれぞれのセカイに生きている
2 「カワイイ」にはルールがある
3 赤ちゃんは美人が好き
4 「気の持ちよう」は特効薬
5 見慣れたものに惹かれてしまう
6 「数学センス」は誰にでもある
7 自分に対しては鈍感!?
8 意志が自分を成長させる
9 ヒトは心を読むチカラを持っている
10 「一緒に」で幸福度UP
11 自分の脳は信用できない
おわりに
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章ごとに、(1)日常生活の中で心の不思議を感じる具体的な事例をマンガで紹介し、(2)その事例に関連する心理学の実験をマンガで紹介し、(3)さいごにその現象や実験について専門用語も交えながら、それでも平易に、さらに具体的に掘り下げる解説、という構成になっています。
(1)として、たとえば1章では、人を顔ではなく髪型で判別する人もいる(同じものを見ているはずなのに人によって見方が違う)、ということや、5章で、輸入品などの珍しいものがいっぱいのお店に行ったのに、結局知っている商品を買ってしまった、という事例が紹介されます。
1章の(2)では、「バスケットボールの試合の動画中、白チームが何回パスをしたか見ていてください」と被験者にお願いしたところ、動画にゴリラの着ぐるみが登場してパフォーマンスもするのですが、ゴリラに気づいた人は被験者の半数程度だった、という興味深い実験が紹介されます。
上にも書きましたが、マンガで分かりやすく、具体的な例にもとっつきやすいだけでなく、(3)の部分では実験の参考文献や専門用語の紹介もあり、さらに踏み込んで勉強するきっかけも提供してくれます。あえてないものねだりをすれば、実験結果を紹介する英語論文が紹介されているのですが、たとえばその現象にもう少し踏み込んだ日本語文献(や入門書)の紹介などもあれば、もう少し関連分野に手が届きやすくなるのかな、と思いました。
少し前に新聞で上田先生の紹介記事を見てから、気になっていた一冊です。
これは面白かったです。
(2022.12.02読了)
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