岡崎勝世『世界史とヨーロッパ―ヘロドトスからウォーラーステインまで―』
~講談社現代新書、2003年~
著者の岡崎先生(1943-)は埼玉大学教養学部名誉教授。ドイツ近代史と、本書のような史学史を専門にしていらっしゃいます。
本書は、「世界史」叙述の流れを、古代ギリシアから現代まで、それぞれの時代の特徴を浮き彫りにしながら概観する一冊です。
本書の構成は次のとおりです。
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はじめに
第1章 ヨーロッパ古代の世界史記述―世界史記述の発生
第2章 ヨーロッパ中世のキリスト教的世界史記述―「普遍史」の時代
第3章 ヨーロッパ近世の世界史記述―普遍史の危機の時代
第4章 啓蒙主義の時代―文化史的世界史の形成と普遍史の崩壊
第5章 近代ヨーロッパの世界史記述―科学的世界史
おわりに
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それぞれの章では、第1節でその時代の「現在」や過去への問いかけの在り方を整理し、第2節で、個々の歴史家の記述を具体的に見ながら、その時代の世界史の特徴を指摘する、という構成となっています。また、それぞれの章で、その時代の概要が1頁で簡潔に整理されているのも、理解の助けになりますし、親切なつくりと思いました。
第2章から第4章までにある、「聖書を直接的基盤とする世界史」(63頁)である「普遍史」と関連して、聖書に関する年代学の議論が興味深いです。たとえば、大洪水が起こったのは何年なのか、という議論は、学者により様々な解釈があったようです。
多くの学者の著作の分析がなされているので、詳細な紹介は省略しますが、世界史叙述の概観を得るのに便利な一冊です。
本書よりはやや専門的になりますが、「歴史叙述」について、各時代の代表的人物の著作や背景を分析した、佐藤真一『ヨーロッパ史学史―探究の軌跡―』知泉書館、2009年もあわせて参考になります。
(2023.06.16読了)
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