ピーター・バーク(長谷川貴彦訳)『文化史とは何か 増補改訂版』
~法政大学出版局、2010年(第2版2019年)~
(Peter Burke, What is Cultural History, Second Edition, Cambridge, 2008)
ピーター・バークは、1937年ロンドン生まれ。2008年時点(本書刊行時)では、ケンブリッジ大学に籍を置く歴史家です(訳者あとがき、200頁より)。
バークについては、本ブログでも次の著作を紹介しています。
・ピーター・バーク(大津真作訳)『フランス歴史学革命-アナール学派1929-89年-』岩波書店、1992年
・ピーター・バーク編(谷川稔他訳)『ニュー・ヒストリーの現在-歴史叙述の新しい展望』人文書院、1996年
また、訳者の長谷川先生の著作として、次を紹介しています。
・長谷川貴彦『現代歴史学への展望―言語論的転回を超えて―』岩波書店、2016年
文化史の潮流をコンパクトにたどる本書の構成は次のとおりです。
―――
謝辞
序論
第1章 偉大なる伝統
第2章 文化史の諸課題
第3章 歴史人類学の時代
第4章 新たなパラダイム?
第5章 表象から構築へ
第6章 文化論的転回を超えて?
結論
エピローグ―21世紀の文化史
訳者あとがき(初版)
増補改訂版への訳者あとがき
読書案内
文化史セレクション、1860-2007年(年代順リスト)
註記
索引
―――
第1章は、文化史の段階を4つに区分します。1:「古典的段階」、2:「美術の社会史」の段階(1930年代~)、3:民衆文化の歴史の発見(1960年代~)、4:「新しい文化史」の段階。
そして第1章では、1の段階の歴史家としてヤーコプ・ブルクハルトとヨハン・ホイジンガを、2の段階としてアビ・ヴァールブルクとパノフスキーらが挙げられます。
第2章は、「文化史の諸課題」として、マルクス主義との関係や、「民衆」「文化」の定義を取り上げます。
第3章は、私が関心を寄せてきている歴史人類学について。フランスのアナール学派の成果が想起されますが、本書はロシア(当時のソヴィエト連邦)のグレーヴィチや、アメリカでの研究者らが、そして「ミクロストリア」としてイタリアのギンズブルグらが強調されている印象でした。
第4章は、新しい文化史にとって重要な4人の理論家として、ミハイル・バフチン、ノルベルト・エリアス、ミシェル・フーコー、ピエール・ブルデューを取り上げ、彼らの理論や影響についてみていきます。
第5章は、「構築」という観点から、たとえば共同体についてのベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』やホブズボームほか編『創られた伝統』といった研究や、個人のアイデンティティ、パフォーマンスなどに着目する研究について論じます。
第6章は、暴力、認識(たとえばアラン・コルバンによる、においや音についての研究)、辺境などに関する研究を取り上げます。
結論に続くエピローグは、第2版で追記された部分で、初版(原著2004年)刊行後の動向に目配りをしています。
巻末の「文化史セレクション」と題された文化史関連の研究の年代順リストには、邦訳のある著作には邦訳の情報も付されていて便利です。
読了から記事を書くまでに時間が経ってしまい、あっさりしたメモになってしまいましたが、冒頭にも書いたように、コンパクトに文化史の流れをたどることのできて便利な一冊です。
(2023.06.19読了)
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