杉本一文『杉本一文『装』画集[新装版]~横溝正史ほか、装画作品集成』
~アトリエサード、2022年~
1990年代、「金田一耕助事件ファイルシリーズ」が角川文庫から刊行されている頃に初めて横溝作品を手に取り、その後古本屋をめぐっては絶版となっていた旧版を探し求めてきました。作品そのものが面白いのはもちろんのこと、はじめて買った頃から、杉本さんによる表紙に魅せられていました。
本書は、角川文庫の横溝正史作品を中心に、杉本一文さんによる装画を集めた1冊です。
ほぼA4サイズなので、あの魅力的な作品たちを大きく見ることができます。(語彙の乏しさが悔やまれます。)『獄門島』『蔵の中・鬼火』など、好みの作品がこのサイズで見られるのは嬉しいです。また、表紙では著者名やタイトルがある部分も、ほとんど著者名・タイトルを省いて掲載されているので、表紙絵が完全なかたちで確認できます。
同じ作品でも、複数の表紙が描かれていることは、「横溝正史エンサイクロペディア」様の表紙図鑑で承知していましたが、『獄門島』や『悪魔の寵児』など、複数の絵をまとめて見られるのも嬉しいです。『悪魔の寵児』の人形を手に持っているバージョンの怖さたるや…。
末尾には元木友平氏による解説があり、ペンネームの由来も含めた杉本さんの経歴が語られます。ここで印象的だったのは、杉本さんがこだわり続けているのが「目」である、という指摘。その観点であらためて収録された作品をながめなおすと、ぞくぞくするような印象がさらに増すように感じました。
また、角川文庫の横溝正史作品は当初別の方の絵だったのが、杉本作品を知った角川春樹氏が杉本作品を表紙に起用してから売り上げが伸びた、というエピソードも印象的でした。
購入をずっと迷っていましたが、手元において正解の作品集でした。
(2024.02.17読了)
・さ行の作家一覧へ