ザンナ・イヴァニッチ(金沢百枝監修・岩井木綿子訳)『CATHOLICA カトリック表象大全』
~東京書籍、2023年~
(Suzanna Ivanič, Catholica: The Visual Culture of Catholicism, London, 2022)
著者イヴァニッチは、日本語監修者序文によれば、現在ケント大学中世・近世研究センターで近世史の教鞭をとる研究者。近世中央ヨーロッパの宗教と物質文化・視覚文化との関係がご専門とのことです(3頁)。
日本語監修者の金沢先生は美術史家で、本ブログでは次の著作を紹介したことがあります。
・金沢百枝『ロマネスク美術革命』新潮選書、2015年
豊富なカラー図版とともに、カトリック芸術の諸側面を描く本書の構成は次のとおりです。
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序文―日本語版慣習にあたって(金沢百枝)
はじめに
第1部 教義
1 神の言葉
2 神の意志を伝える者
3 信仰を統べる
第2部 信仰の場
1 大聖堂
2 家庭
3 聖地
第3部 霊性
1 共同体
2 個人
3 五感
参考文献
掲載図版(出典・クレジット)
索引
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3部構成で、それぞれ3章ずつと、構成も美しいです。
第1部1は、神の言葉ということで、聖書の写本の彩色や、キリスト伝、受胎告知、最後の審判などの図像を扱います。
第1部2は、使徒、聖母マリア、諸聖人などについて、そして第1部3は聖職者や修道士に焦点を当てます。ここでは、各修道会の服装の違いや、祭服(手袋や司教杖など)が図版で示されていて、大変興味深いです。
第2部は標題のとおり、「信仰の場」として、大きく3つを取り上げます。1では、聖堂の構成要素の図解、ステンドグラス、祭器具などの紹介のほか、初期キリスト教から現代までの主要な建築様式を代表的な建物で示してくれているのが勉強になります。
第2部2は家庭を舞台に、個人的な信仰のために用いるマリア像やロザリオなど、日用品に描かれるキリスト教的モチーフなどを紹介。3は聖地巡礼に関連し、主要な巡礼地のほか、巡礼先への奉納物、聖遺物容器、巡礼バッジなどが示されます。
第3部は霊性ということで、1では行列や典礼暦に沿った各種の祭り(クリスマス、四旬節、カーニバルなど)を紹介。2は第2部2とやや重なりますが、個人的な信仰のための宝飾品(十字架像やペンダント、ロザリオ)、寄進者が描かせた宗教的な絵に、自分自身を小さく描かせた事例などを紹介します。末尾は光のイメージや音など、五感を通じた信仰のあり方を描きます。
ごく簡単なメモになってしまいましたが、カラー図版が豊富で、ながめるだけでも楽しい1冊です。今後も適宜参照したい1冊です。
(2024.03.29読了)
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