龍之介のほん 2010年9月1日
2010年9月1日 蜘蛛の糸 ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白でそのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好(い匂いが絶え間)なくあたりへあふれて居ります極楽は丁度朝なのでございましょう やがて御釈迦様はその池のふちにお佇(たたず)みになって水の面をおおっている蓮の葉の間からふと下の様子を御覧になりましたこの極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから水晶のような水を透き徹して、三途の河や針の山の景色が丁度覗きめがねを見るように、はっきりと見えるのでございます するとその地獄の底に カンダダ)と云う男が一人ほかの罪人と一しょにうごめいている姿が、御眼に止まりましたこのカンダダと云う男は・・・・・おなじみ 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の一節。蜘蛛をみていたら あの小説を思い出して載せてみました