メラニン色素は皮膚の表面の褐色の色素として、よく知られています。シミという表現で、女声の美容の敵として、嫌がられたりもしますが、メラニン色素の役割は、紫外線による表皮細胞のDNAの破壊を防ぐという、大切な働きをしています。

このメラニン色素が不足したり、創られなかったりしますと、皮膚は炎症を繰り返したり、皮膚がんになったりするのです。

皮膚のいちばん表面の細胞は、角質層と呼ばれ、表皮細胞が脱落する寸前の細胞が固くなって板状になった部分で、外的刺激をブロックして、皮膚を守っています。

表皮細胞は、表皮のいちばん深い基底層に並んでいる基底細胞が分裂増殖して、徐々に皮膚表面に上昇して、約２週間で角質層に達して、皮膚表面から垢となって脱落していきます。

メラニン色素は、基底層にある色素細胞で創られ、表皮細胞に移送され、 皮膚を紫外線から守っているのです。

この色素細胞で創られたメラニン色素が、表皮細胞に移送されるメカニズムは長年、謎とされていました。最近、京都大学の発生生物学研究チームが、色素細胞で創られたメラニン色素顆粒が、膜に包まれて細胞の先端部分から飛び出し、隣接する表皮細胞に入る瞬間を、高い解像能を持つレーザー顕微鏡でとらえることに成功したことが、イギリス科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に報じられました。

このメラニン色素の移送には、 ガンの転移にも関与するRhoという蛋白が、重要な役割を担うことも、突き止められました。

これは画期的な発見で、皮膚がんをはじめメラニン色素が関与する病気の治療や、色素が脱失する皮膚病、染みの治療などに役立つ可能性があります。