​​​リ​ムスキー​＝コルサコフ（1844~1908）の歌劇『サドコ』の中で歌われるのが、テノールのアリア、『インドの歌』です。

この歌劇は中世のノヴゴロド公国が舞台です。美声で民謡を歌う「サドコ」が、湖のほとりで一羽の白鳥に姿を変えていた、海の帝王の末娘のヴォルホヴァと出会います。ヴォルホヴァは人間と結婚する運命にあったのです。ヴォルホヴァはサドコと結婚出来れば、と願い、サドコに3匹の黄金の魚を捕らえれば、世界の海に貿易に出る望みが叶う、と持ち掛けます。

そこでサドコが湖に網を投げ入れると、ヴォルホヴァの助けで3匹の黄金の魚がかかり、もういちど網を投げ入れると、今度は金塊がかかり、大金持ちになります。サドコはそのお金を資本に、海外貿易に乗り出そうとします。その行き先を決めるためにサドコが、ノヴゴドロの港で各国からの商人に、それぞれのお国自慢の歌を歌ってもらいます。その中のひとりがインド人で、その歌う歌が『インド（人）の歌』として有名になり、器楽曲としても演奏されるようになりました。

海外貿易に乗り出したサドコは、航海の途中難破してしまいます。そこで海の嵐を鎮めるために、海の帝王の生贄になる者を、くじで決めると、サドコがくじに当たってしまいます。生贄になったサドコはただひとり海底王国へ沈みますが、海底王国では大歓迎され、「ロシア版浦島太郎」のような宴の毎日を過ごし、めでたく海の帝王の末娘、ヴォルホヴァと結婚します。

その結婚式では海の怪物たちが集まって踊りが始まりますがあまりにも激しすぎる踊りのため、海上では大嵐となります。そこに巡礼者の姿をした戦士の亡霊が現れて、サドコのグースリ(ロシアの民族楽器）を取り上げ、宴会を鎮め、ヴォルホヴァを海の帝王から引き離して、サドコとヴォルホヴァは海上へと昇って行きます。

地上に戻って、ヴォルホヴァと最初に出会った湖のほとりで眠るサドコに、ヴォルホヴァが優しく子守唄を歌います。夜が明けると、ヴォルホヴァは溶けてロシアの4大河川（ヴォルガ川・ドニエプル川・ネヴァ川とヴォルホフ川）のひとつ、ヴォルホフ川になり、目覚めたサドコは妻や仲間達と再会し、めでたしめでたし、となり、ロシアの古民話をもとに創られた歌劇『サドコ』の幕が降ります。

この『インドの歌』はテナー歌手、マリオ・ランツァ（1953年）が you tube で、変イ長調で歌っています。 私が頂いた楽譜はフルート用の楽譜で、ヘ長調です。