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あいうえお道場/職業訓練編

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カテゴリ:マリエル/後輩S
※前編からお読みくださいませ



(シーン3)
ワールドビジネスガーデンで中華を食べる。

すっかり擬似家族となった3人である。トニーローマというレストランが家族のお気に入りであり、ささやかな贅沢、そして幸せの象徴のような店であった。あの店はアメリカ南部のリブステーキがウリであり、オニオンスライスにケチャップをつけてほおばるという、フィリピンにも通じる味覚の街道があった。マリエルはいつもステーキをオーストラリア人のようにウェルダンで焼いてもらい、パサパサになった肉を故郷の味がするといって喜ぶのだ。

本日は貸切となっていて残念だった。他の店はどこもメッセのイベント客が押しかけて行列だ。マリエルは先頭を歩いて、パスタ屋等を見て回り、結局、中華の店に決めて入った。今日のあいつは、ビールも途中まで注文しなかった。私が運転のため飲めないことを考慮してのことだ。殊勝な行動である。結局1杯だけ飲んだ。やつはイラだっていた。料理がすぐに出てこないので文句をいった。今日だってもちろん仕事がある。土曜日は休みでもすれば2万円のペナルティーだ。19:20に店長がクルマで迎えに来る。それまでにミクとコウキにご飯を食べさせて、夫の実家に連れて行かなければならない。夜間は、祖母が世話をしている。ちなみにDV夫は実家にはいないようだ。

「おまえ、どうして約束をすっぽかした時にあとで(ゴメンナサイの)電話しないの?」

幕張の浜へ移動するクルマの中で尋ねるとヤツは逆ギレ状態となった。あいつの基本は、じぶんの望みだけは強く主張する。テレビチョウダイ、お金タスケテ!だが、他人の気持ちを汲み取って受容することが困難だ。私は、約束をすっぽかして電話もできずにいてどんな気持ちなのかが知りたかった。ヤツは、
アタシにすっぽかさせてケンカになっているのはオレだけではない(だから、ガタガタいうな)というまったくドキュンな理屈を展開してみせた。こいつはやはり人格がおかしくいなっているのだな、と思うほかなかった。最近でもヤツが約束をすっぽかしたことが原因で、親しい友人(女性)の堪忍袋の緒が切れて大喧嘩になったらしい。あいつがときどき不満をもらす、「ミンナガ、ワタシニツラクスル」という不平が少々恐ろしい。問題の所在はじぶんにあるんじゃないの、ということがわからない。交際範囲の広いヤツの周辺では(フィリピンの世界)ヤツから距離をおく人が増えているのではないだろうか。(勤める店の人間関係以外において。)

電話に出たくないときには電話を投げるとまでいった。電話はフィリピンの母親からもよくかかってきて、それを取らないことがよくある。かと思えば私としゃべっている最中にメールが来ると中断してレスを始めることもある。エクスキュースもなしに。じぶんには電話というツールが合わないのではないかとまで言っていた。「ヒトリガイイ」と突発的な発言をする。


(シーン4)
幕張の浜で

3:30頃になったか。マリエルはビーチにいってリラックスすることにこだわっていた。陽気がよく、また幕張の浜は稲毛の浜よりもこじんまりして人も少ない。

ビーチまで向かう道で、話はお金の援助ができるかできないか、という件や、結婚する気があるのかないのか、セックスしないのか、というヤツが逃げたく、私が追究したい内容について、怒鳴りながら話をした。「お金を借りることと、結婚の件は別。今は独身生活を楽しみたい(じっさいはまだ離婚できていないのだが)いつ、結婚したくなるかどうかは、わからない。おぎーのさんのことは愛している、フィリピンにいるジェリー12歳(この子も片親)は私の養女として日本に連れてきたい(わたしの話は母およびジェリーにしており、ジェリーはぼんやりと、いつか日本のおじさんがパパとなって迎えにきてくれて、幸せになれると思っているようだ)、とディープな件について炸裂した。

書いていても、頭の中が混乱してきた。どこで何の話をしたか記憶が不確かなところもあるが、まあ、空気が伝わればよいだろう。


険悪な我々は、寄せる波打ち際で、遠くの東京のビル群を眺めながら、海に向かって叫んだ!

「マリエル、チ○ポ咥えろ!バカヤロー!」

「ヤラセロッ、コンバカッ!」

青春ドラマのこのシーンは実際にやってみると、じつにスッキリする。うつ病のセラピーによい。私が叫ぶと、マリエルはウケて無邪気に笑った。あいつも叫んだが、何をいってたのか、覚えていない。風が強くて、ちょっと距離があるともう聞こえないのだ。


こんなオマエにオレサマはもうギブアップ。

ついに離別の言葉が私の口から出た。マリエルは海に向かって涙を浮かべるしかない。1万円もするトリートメントシャンプーをこの期に及んでも欲しがっているのだ。その了見がわからない。私のセゾンカードは引き出しができなくなってしまったのだ。(これ、ちょっとしたカラクリあり。後日、記すことになると思う。ショッピングはできるからヘンだが。)

さんざん己の主張ばかりで(ヤツも生きるために必死なことはよくわかる。そうだ、結婚できない理由には永住権の取得や、娘のミクが反対していることもあった。)逆ギレしまくっていたマリエルも、私のギブアップの一言で撃沈した。私はたんたんと冷静だったのだ。「わかった。もう、マリエルが嫌がることは訊かないよ、なんでウソつくのかとか、あやまらないのか、とか。もういい。それから、マリエルについて、もうカンケイないことにした。お財布がパンクしたんだ。もう、オレもできないことはできない。」

(シーン5)
帰りのクルマの中で

記憶があいまいだ。車内にぶら下がっていたフィリピンのお守り(天子様とマリア像)をバックミラーからとって、マリエルに握らせた。その上に私の手をかぶせる。「神様の前で、おまえ、オレのことを愛しているっていえるか?誓えるか?」「アイシテイマス」とヤツはいった。この女のアイラブユーは真実味がないので、神を介在させてみた。結果は同じだった。ということは信じていいのかな、もう、ヤツの内面はこんなことをしても理解しがたいことがある。

車内ではじぶんでも忘れてしまった古いカセットテープがかかっていて、大瀧エイイチの『幸せな結末』がかかった。マリセルも好きな曲らしい。コウキとマリエルは後部座席で、じっとしていて、母親は一点を見つめてボーッと何かを考えている。あいつは、金が引っ張れずに、ドアがドスン!と閉めてケッ!という風体で帰ることもあったが、今日は、態度が偉く軟化した。

私が運転しながら考えていたことは友人の忠告はその通りであり、そろそろマインドコントロールより解かれてもいいのではないかということ。別離である。彼女の性格や生き様からして、私と、いや、誰とであれ、円満な夫婦関係が築けてお互いの親の世話までうまくケアできることは不可能だということ。私は別の女性を探すがよしということ。ヤツはしばしばいうが、もしも私が他の女と結婚したらアタシも友達として呼んでくれとヤツはいう。それでいいと思う。
アタシは悪い女であり、そんなアタシによくしてくれた私は、神様がちゃんと見ていて、幸せになれるのだそうだ。

1万円のトリートメントはできません、というと、アイツは最初から欲しいのは2000円のものであると息を吐くようにうそを言った。とても穏やかで柔和な顔をして。私はようするにキープしておけばいいのだな。誰もいないと寂しいから。どんどんパロパロすればよい。それが嫌ならそのときがエンドマークだ。幸せな結末はもう少し先になりそう。

この日記は尻つぼみで、この項はこのまま終わります。

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最終更新日  2006年10月08日 02時26分26秒
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