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テーマ:ニュース(100237)
カテゴリ:ソーシャルなワーク
もう一昨年になるのか、耐震偽装事件が盛り上がった時に、私は建設業界にいるI君に、つい、いろいろと質問してしまったが、I君は「仕事の話はしないでくれ!」と怒ってしまったことがあった。あの時は悪かった。誰だって、プライベートで仕事の話しなぞしたくないものなのである。しかしながら、巷ではコムスンさんの不正の話題で盛り上がっている。『介護保険ビジネスとは何ぞや?』というところまで来ている。結果として、介護保険により重いうつ病に苦しんだ私は、この事件とも向き合わねばならぬのである。
そもそも、コムスンとはどんな会社だったのか?もともとは福岡において、日本で最初に24時間在宅介護を始めたヘルパーステーションだったのである。それまで日本には深夜にお宅を訪問するというスタイルはなかった。コムスンはNHKに取材される誇り高き集団であった。認知症の高齢者の行動を科学する研究会にときどき出向いていた私は、95年頃のコムスンの皆さんのインテリジェンスに感心したものだ。それが、例の折口氏がコムスンを買収して様子がおかしくなってきた。才色兼備のあの女性は(といっても誰もわからんだろうが)そうそうにコムスンから去っていった様子であった。2000年の介護保険制度を見越して、コムスンは事業を急ピッチに拡大していった。200億といわれた資金を集めた折口氏は、その点についてはえらいと思う。彼の考えは、シェアをとるところにあった。とにかく日本全国をコムスンカラーに染めてしまえば、介護保険制度はコムスンなしでは立ち行かなくなる。経済用語でいうと売上高極大化仮説に従った。ニチイ学館もコムスンに追随し、両者は同様な戦法を採った。 介護保険のスタートはいわば革命であったから、どこの会社も荒っぽいことをやった。私の介護支援専門員の証書のコピーは、ある市において2つの会社で使われてしまったほどである。厚生省も当時は見てみぬふりをしていた。革命には血が流れるものなのである。 2000年当時、コムスンには、これまでの措置制度という閉鎖的空間でコテコテの社会福祉法人のオヤジに搾取されているのにうんざりした輩が、夢と志を携えてやってきた。いい人材が集まっていたと思う。守旧派は、この革命を恐れていた。介護の世界が実力主義になることを。しかし。今ふりかえればわかるのだが、介護においての実力主義とはなんだろうか。売り上げを伸ばすことなのだろうか。最初に集まった優秀なケアマネージャーは2年ほどでだいたいがつぶれてしまったと思う。当初、彼らが(この私も)描いていた理想はもろくも崩れ、「お客様第一」という旗印のもとに、デタラメなケアプランは作られていった。(専門的にいうとサービス優先の御用聞きプランということになる) ここでケアプランという専門用語がでたが、簡単に言うと、ケアマネージャーはお医者さんで、ヘルパーなどのサービスを薬局としよう。コムスンやその他あこぎな現場においては、薬をたくさん出すケアマネージャーが尊ばれたのである。それは介護保険制度の根幹を否定することにもつながり、またケアマネ自身の良心を苦しめるものであった。医学の現場において薬局が医師に「たくさん薬を処方しろ!」とプレッシャーをかけてくることはほとんどなかろう。確かに薬を山盛り処方する医師もいる。だが、そんな医師はそんな医師として世間様も彼らをある程度正しく認識できるだけの能力がある。 コムスンは診察も受けていない患者に薬のてんこ盛りをやった。 厚労省が激怒しているのは、この1点である。これでは介護保険制度は崩壊してしまうからだ。私も先日、あるケースのサービスが必要なくなってストップしたら、職場の担当者がキレて「おまえなー」なんていう構えで圧力をかけてきた輩がいた。私は怒鳴りかえしてやったが、こんな野郎をおとなしくさせるのにも、今回の厚労省の一件は、じつに効果があるのである。 ケアマネジメントは利用者の自立支援をその第一の儀としている。理想をいえば薬を飲まなくてもよい状態にすることだ。だが、コムスンの経営スタイルは利用者(彼らはお客様と呼んでいる)を薬漬けにすることであった。 いやあ、オレサマって難しい話を優しく説明するのがうまいよなあ。 オレサマも実はコムスンにある夫婦のケースでヘルパーを頼んでいる。もともと私が立てたプランではなくて、コムスンのケアマネージャーがあまりにも仕事をしないものだから、利用者が困って、ケアマネージャーを私に変更したのだ。やりたい放題のサービス提供状態だったが、(それを関西弁の利用者も望んでいた)これまで、法の番人としてある程度すっきりさせてきた。結局、少しずつコムスンのサービスを切っていくことになるのだが、これは、この事件が起きる前からの計画だ。 コムスンがなくなっても、ほかの事業者にとって変わるだけで、世間がいうように、困る高齢者はほとんどいなかろうと私は思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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