|
テーマ:国際恋愛(198)
カテゴリ:マリエル/後輩S
2組の男と女がバーのカウンターで酒を飲んでいる。一方は、私とフィリピン人女のマリエルで、もう一方が、29歳マッチョな白人ボーイとスレンダーな日本人女性だ。地方の町にしてはめずらしいオサレな店で、イビサだのワールドミュージックだののポカーンッ!とした空気の中で、マリエルは生ビールをぐびりと飲み、カウンター内のシンジは、ドレッドな頭で愛想を振りまいている。
90度の角度で2組のカップルが組み合っている。なぜか日本人の女は私と視線を合わせようとはしない。関心がないだけか。マリエルの視点からみれば、白人男も日本人の女も等距離に見えるようで、こちらもどうということもない。僕ら(私とマリエル)は彼らがダーツを始めたので、それをぼんやりと眺めていた。 マリエルがダーツに関心を示す。そこで私が「ダーツのルールがわからない。」という。 ルールがわからないダーツの光景をじっと見るふたり。日本人の女は、ダーツをやる自分に特に酔っているわけでもなく、はしゃぎすぎていることもない。もうそれほど若くはないからだろう。 カウンターの4人を鳥瞰図で見て、白人ガイ(日本語ウマいよ、英会話講師っぽいぞ)と日本人女の図式が私とマリエルの図式に似ていると考えるのは、私だけか。いや、もしかするとあの日本人の女も同じことを考えているのかもしれない。己のポジションが日本人のおっさんとフィリピーナの関係と同様だと、そして、それを見透かされたくないと。 ちょっと目には確かに違う。だが、私とフィリピーナは経済格差の上に成り立っているところがあるが、白人ガイと日本人女の組み合わせの場合も、もしかすると金を払っているのは日本人女のほうであるかもしれない。するとやっぱり、私と日本人女は似たもの同士なのか。ひとつ、告白すれば、私がバリラティックに連れてきたのは、その店の無国籍風の雰囲気とマリエルのルックスが似つかわしいと思ったからだ。シンジは、マリエルの名前を尋ねて、源氏名ではなくて、本名で覚えた。この店は、ジャマイカやアフリカ、地中海がミックスした世界で、じつは英語とスペイン語を両方話すフィリピーナにとって、まことに居心地のいい空間だってことだ。アフリカの民族音楽とテクノやアシッドジャズがミックスした音楽は、世界の果てのようだが、地方のフィリピン人にもしっくりくる音楽だ。 この店で、私とマリエルは深刻な話をいっさいしなかった。あの空間においては平和が支配していた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[マリエル/後輩S] カテゴリの最新記事
|