鬱がつらい。こんな私でも10年ほど前に職場でスクーバダイビングが流行り、若い寮母に連れられて、みんなが参加しているダイビングショップでオープンウォーターのライセンスを取りに行った。(グアムで体験ダイビングをやって、感動しちゃったのだ。それで。)店主、要するにインストラクターは35歳の筋骨隆々の爽やかな男。うちの女の子たちが集まってくる一因がわかったものである。私も彼の生徒として、講義に、実践に、マンツーマンで教わったわけだが、しっくりこないことがいろいろあったな。
まず、店内には『ダイバーの肺を守るため、喫煙はご容赦ください。』とテーブルにカードがあって、それがハテナのはじまり。気持ちはわからないでもないが、お客さんが愛煙家だったらどうするのかな、と思った。ちなみに私はタバコを吸わない。
それから、講義を終えて、プールでの練習もなんとか乗り越え、いよいよ金谷の海での実践となった。途中、車の中で彼は釣り人たちを猛烈に批判した。「彼らはただの狩人だ」と。無駄な殺生をしている。スポーツでもなんでもないと。ただ、私はテレビ東京の釣り番組を観ていたので、彼らはただの狩人ではないことは重々承知していた。リリースするもんね。糸の始末とか環境に配慮する釣り人は多い。水の中に潜ることとどれほどの違いがあるのかと思った。
私の考えではスクーバダイビングはかなり贅沢な道楽である。ボンベ代も高いし、まあゴルフくらいの金が実質1時間半ほどで消える。場所は自然の中。人間が通常の道具ではとうてい無理な海中にいく行為は、まさに人間のエゴイズムである。私はそれを承知している。だが、店主は、やれ「魚をおいしいと思って見てはいけない」とか、見つけた魚を書きとめろ、できればイラストを描けとせまる。彼らの中でのモラルがあって、生き方としては今で言うロハスである。
私は、ていのいいインチキな考えだと思った。だったら海に潜るなよ、と。要するに君たちにとって海中はお金の転がっている場所だろ、と。エンターテーメントに徹したらどうか、と。私は3回目の実践はハワイにたまたま職員旅行に行った際に終えて、ハワイでPADIの免許をとった。やつらはみょうちくりんなことはいわないぞ。商売と割り切り、ドシロウトの体験ダイビングで事故のないよう見えないところで気を使っている。海外で、潜るときには、ギア(道具)の準備はスタッフがお膳立てをしてくれる。サービスといえばサービスだし、もっといえば客のダイバーとしての能力を信用していないともいえるのだ。これがプロなんじゃないかな。
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