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不登校・ひきこもり・ニートを考える

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巨椋修(おぐらおさむ)

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2008年05月28日
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カテゴリ:周辺事態
わたしは『不登校・ひきこもり・ニート』を、『家族問題』であり『家族障害』であると考えております。


誤解を生まないように説明をするならば、たかだか子どもが学校にいかない程度のことで、パニックを起こしたり、嫌がる子どもの腕をつかんで引きずってまで、学校に連れて行こうとしたり、子どもを責めたり、母親を責めたりすることはなく


たかだたか子どもが、家にひきこもったままであったり、働けなくなっている状態にあるときに、お互いに腫れ物に触るような付き合いになったり、肉体的・心理的家庭内暴力が生まれたりするというのは、家族として健康的な状態ではなく、柔軟性も失っているということです。



健康的な家族であるなら、『不登校・ひきこもり・ニート』は決して大きな問題にはなり得ず、それらの状態とうまく付き合って行って気にしないで生活をしているか、早期に解決しているものです。


同じく自殺もまた、『家族問題』であり『家族障害』であると考えています。


医学の世界には、次のような格言が古くからあるといいます。



「自殺の危険の高い子どもの背後には


自殺の危険が高い親がいる」



「自殺の危険の親の背後には


自殺の危険が高い子どもがいる」





青少年の問題行動は、家族の状態と密接な関係があることは、よく知られています。


これは自殺だけに限らず、『不登校・ひきこもり・ニート』といった問題もしかりです。


学校でいじめ自殺が起こると、問題は「いじめ問題」に集中してしまいますが、いじめられている子どもは、もしかしたら家庭内での環境や生育歴が原因で、いじめを受けやすい言動(あるいは、相手をいじめてしまうような言動)をしてしまっていたということもないわけではないのです。



精神医で自殺研究にくわしい防衛医科大学の高橋祥友教授の言葉を借りると


「ある人のあらわす症状とは、家族全体の精神的なバランスを保つために、その人と家族が支払っている犠牲の結果ともとらえられます」

(『自殺の心理学』高橋祥友著 講談社現代新書)


ここでいう「ある人」とは自殺者のことを指していますが、これは自殺に限らず、『不登校・ひきこもり・ニート』にしても、同様に考えることができます。



わたし自身が、多くの『不登校・ひきこもり・ニート』の当事者や、自殺未遂者、自称癖のある人、精神疾患にかかっている人から話を聞いた場合も、その多くで親との葛藤や、親自身になんらかの問題があると、感じられることが少なくありません。


サバースという精神分析医によると、自殺の危険の高い人は、家族の中で『取替えがきく子ども』という役割である場合が多いといいます。

サバースによると、




「意識的、あるいは無意識的に、言葉に出して、あるいは無言で、自分のことを取り除こう、死んでしまった方がよいと、子供が解釈するような親の願望が存在する」




さらにサバースは




「親は子供が、親の幸せに対する脅威であると見ており、そして、その子供は、親が迫害者か抑圧者と見る」




といいます。


残酷な言い方かも知れませんが、『不登校・ひきこもり・ニート』の当事者なら、この言葉にうなずく人がたくさんいると思います。

また、次のようなことも言っています。




「自殺の危険の高い子供は、それぞれの親の特定の精神症状の特定の必要性にかなうので、家族の構造の中の不安定な平衡を保つのに役立っている」




また、精神療法家のリッチマンによると、自殺の危険がある家族のいる家庭というのは、その病的なバランスを保つために、家族の誰かを【スケープゴート】にしていることが多いと述べています。


スケープゴートとは、犠牲のひつじ、つまり犠牲者、いけにえの意味なのですが、スケープゴートの役割は




1、家族の問題をすべてその人物の責任にする


2、そうすることによって、合理的な問題解決を回避する


3、家族間の病的なバランスを保ち、分離不安を解消する


4、家族の抱える自責感を晴らす


5、この一連の行為によって、家族は直接的かつ間接的にスケープゴートの自殺行為に加担する






これもまた、『不登校・ひきこもり・ニート』の当事者・関係者はうなずかれる方が多いと思います。



さらに、小児精神科医のフェファーは、自殺の危険が高い青少年の家族には、親子二代を超えた問題があると指摘し、次の5つの特徴をあげています。





1、親自身も自分の親から十分に自立していないため、自分が親に対して抱いている敵意、喪失感、自尊心の低さ、過度の愛着を、自分の子供になげかけてしまいます。


2、深刻な葛藤に満ち、柔軟性に欠けた夫婦関係が存在します。(中略)


3、親の非合理な感情が子供に投げかけられてしまう結果、慢性的な親子間の葛藤が存在します。


4、心理的に不健康な形で一本化している共生的な親子関係認めます。(中略)


5、全体として柔軟性に欠ける家族のシステムができあがってしまいます。







以上、これらの参照文献は、『自殺の心理学』高橋祥友著 講談社現代新書からのものです。
もっとくわしくお知りになりたい方は、ご一読をおすすめします。


そして、やはりこれらも、『不登校・ひきこもり・ニート』の当事者、関係者には納得できる方が多くいると思います。


そして、親御さんにとっては、耳が痛いものかもしれません。


しかし、知っていただきたいのは、自殺にせよ、『不登校・ひきこもり・ニート』の問題にせよ、本人一人が苦しんでいるのではなく、家族全体の問題であることが多く、また、自殺にせよ『不登校・ひきこもり・ニート』にせよ、当事者ひとりが解決のために行動するよりも、家族全体で、問題解決をする必要があるということです。


ただ……


悲しいかな、そういった家族の場合、すでに家族全体で解決のために動くというのが、難しくなっている場合も多く……


当事者のみ、あるいは母親のみが、単独で動かなくてはならないようなことも多いと思います。



かくのごとく、自殺や『不登校・ひきこもり・ニート』の問題は、家族の問題であり、関係は限りなく深いのです。




いま、日本では3万人を超える人が、自殺で亡くなっています。


しかし、実際には、自殺未遂の人がその10倍以上いるといわれています。


自殺未遂までいかなくても、自殺を考えた人は、100倍くらいいるかも知れません。



しかし、もし自殺未遂ですんだ場合、考えようによっては、家族のひずみが、そこに噴出してしまったかも知れないわけですから、これを機会に、責任を(当事者も含めて)家族の誰かに押し付けるのではなく、みんなで考え、みんなでやり直すキッカケになるかも知れません。



例え、家族にそのような理解がないとしても、誰か一人がそのことに気付いて、解決のために適切な行動をとるキッカケになればと思います。












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Last updated  2008年05月28日 12時33分32秒
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