桐まみれの日々　by　さきさん

　嗅覚を失ってまもなく丸2年が過ぎようとしていますが、ここに来て嗅覚が戻ったようです。

　｢ようです｣なんて、まるで他人事みたいですが、実際、今、感じている匂いが本当のものなのかどうなのか、自信が持てないので｢ようです｣なのです。

　だけど、10時と3時のお茶の時間の事務所に漂うコーヒーの匂い。

　お風呂上りのほんわかとしたお湯の匂い。

　田植えに先立って刈られた草の青い匂い。

　そして、子供の頃から大好きだった、雨が降り始めた時の土の匂い。

　考えてみると、匂いって、どこにでもあって、当たり前のようにそれを感じていたのに、無臭の生活に慣れてしまって、感動ってモノが希薄になっていたと思う。それに、何度か、匂いが戻ったこともあったけれど、直ぐまた、分からなくなってしまって、匂いが分かることに逆にびくびくしてしまう自分がちょっとかわいそうでもあった。

　だけど、今回は本物みたい。彼是三日以上は、ばっちり、匂いの分かる生活。今のところ、衝撃で再び嗅覚を失ってはいけないので、愛犬ゆずの匂いだけは、あえて匂わないでいます。

　トイレでも、何も匂わないので、｢松田聖子並だわ。｣と思っていたけど、人並みだと言うことを再確認。それでも、やっぱり、つくづく、匂いが分かるって素晴らしい！