秋財布は買うな!
先般、おいたちの小箱に特許が下りた事を受け、実家の母が律儀にも金一封とビールをお祝いに持参してくれた。金一封の中には、福沢諭吉先生が五人も顔を並べていらっしゃったので、おっかなびっくりであった。 何事も気になる義母には、これがどうにも荷が重く(ってそれをいただいたのは義母自身ではないが家族のことは我が事のように気になるのである)、一刻も早く返礼をと気は急くばかり。地元の天満屋ハピータウンの商品券ではどうか、などと積極的な提案が飛び出す。 尤も、それもこれも、嫁の私に任せていたのでは物事は進まないことが義母の頭に擦り込まれており、私としては返す言葉もないワケで、牛に引かれて何とやら・・・。天満屋ハピータウンに参じ、サービスカウンターで商品券を申し込んだ。 しばらくお待ち下さいの言葉に、カウンター付近に設けられたワゴンのお財布を物色。実は会社の経理をしていた義母から引き継いだ財布が、角はすれてしまい、小銭を入れる所の布は破れ、すでに賞味期限をとうに過ぎた状態なのである。義母のことなので、相当高級なものだと想像するが、かれこれ10年は使っているだろう。そこで、このところ、それと同じタイプのお札を曲げずに入れられる長財布を探していた。なんと、ワゴンには1,000円とお値打ちのものがあった。薄紫色で皮革風な素材だ。 これこれ!と思い、手に取り、中を開けたりしてみる。内装のレイアウトも非常に良い。キモチは90%まで決まっているが、ひょっとして、使い始めて一ヶ月で壊れるんじゃないかと不安が頭を持ち上げる。なにしろ、1000円だ。 あぁ、一ヶ月の試用期間があればなぁ・・・・ が、しかし、1000円の財布にそんなことがある訳もなく、決めあぐねているうち、ふとわれに返りサービスカウンターを振り返ると、お姉さんがこちらを見て微笑んでいらっしゃった。 手に取った財布を戻し、商品券を受け取りに。 車に戻り、待っていた義母に次第を話した。すると、義母が一言。 まぁ、今は止めとき。秋財布は買うなって言うで。 え゛!?そんな言い伝えがあったなんて。今、ここで秋財布を入力し変換してみると、空き財布と出る。そこなのか?そうなのか? いずれにせよ、それでなくても空き財布な私の財布がさらに空きになることを止めてくれた義母には、感謝する他ないということだ。