優勝逃す
WBCで日本が優勝を決め、J開幕3連勝していたエスパルスがジェフに敗れた同じころ、わが家の近所でも一つの闘いが繰り広げられていた。★★CUP。経営元を同じくするサッカークラブの、近隣3チームが集まって行なわれた未就学児童の大会である。場所はとあるフットサルコート。晴天のもと、約60人の未就学選手たちが集まった。2つのコートに分かれ、それぞれ3チームでの総当たり戦。1試合は8分間(ハーフタイムなし)。ルンバはかねてからこの日を楽しみにしていた。大会自体ももちろんのこと、クラブの無料体験会を兼ねたこの大会、保育園の友達が来てくれることになっていたからである。「いつもサッカーではほいくえんの友だちに会えないから、きょうはぼく、うれしいんだ!」にこにこしながら大はしゃぎだ。準備体操の後、試合が始まった。1試合目はオレンジ対グレープ。ルンバたちグリーンが対戦するオレンジがめちゃくちゃ強い。これはまずいぞ…と思いながら試合を見守る。いよいよルンバたちの1試合目。オレンジ、先ほどまでの勢いはどこへやら、グリーンが一方的に攻め込む。ルンバはしょっぱなGK(途中で何度か交替があるのだ)。立ち上がりの悪いルンバのこと、相当心配だったが、グリーンが攻めていたおかげでなんとか無失点のまま交替。いっちょまえに保育園友達に向かって「ぼっとしてるんじゃない!」なんて声をかけていて苦笑。チームにはずば抜けて上手な子が2人。そして今日初めて参加するルンバの保育園友達、この子がまた上手だった。この年齢では皆まだ「わかっていない」ことがほとんどなので、上手な子というのは「どこにいるべきか」「どこを走るべきか」「何をすべきか」がわかっている。この差は大きい。試合終了。グリーン勝利。やった!続いて2試合目。今度はグレープとの対戦。やはり一方的に攻めるグリーン。それにしても…、ルンバ。なぜかサッカーの試合中にスキップしているのであった。おーい。試合はグリーンの勝利で終了。終わった後に息をはずませながら、ルンバが言う。「ぼくね、あたらしいわざをあみだしたんだ!」どんな?「馬さん走り!」……。あのスキップは技だったんですか。その技はどうかと思いますが…。1試合休憩を経て、3試合目。なんかちょっとぐだぐだ? みんなもしかして疲れてきてる? そしてスキップをするルンバ。おーい。頭を抱えていると、応援に来てくれた保育園友達ママに「でもルンバくん、すごく楽しそうよ」と笑いながら励まされる。そうね、本人すごく楽しいんでしょうね…。3試合目は引き分けだった。連続して4試合目。これに勝てば優勝できる。でも…。やっぱりぐだぐだなのだ。みんな前半飛ばしすぎて、しかもとても暑い日だったので、すっかり疲れてしまっているのだった。そしてスキップをするルンバ。……。4試合目。とうとう負けてしまった。もちろん優勝は他チームの手に。へらへらと試合をしているように見えたルンバ、優勝チーム発表後にうずくまっている。どうしたの?「ぼく、優勝したかった…」悔しいのだ。ルンバの頭をなでながら、悔しがる彼がうれしかった。悔しい気持ちはバネになる。「また練習がんばろう。いちばんがんばった子がやっぱり優勝できるんだよ。パパはそう思うよ」夫に言われて、うなだれつつもうなずくルンバが、少し大きく見えた。さて、記念品授与など一通り終わった後、おまけプログラムが。先生チーム対パパチームの試合である。ここのところ旅行や仕事のため草サッカーに行けずにいた夫、試合ができるとうれしそう。はりきってビブスを着ようとしたら…、入りません。だってそれは子ども用。大半の標準体型のパパたちは着ていたけれど、巨体の夫にそれを着ることはできず、首にかけることに。がんばれ~とそんな夫をピッチに送り出す。試合開始。応援席から「わあっ」という声が上がる。見れば、夫がコーチに勝負を挑んでいるのであった。相手が上手なだけあって、かなり本気。「すごいすごい、ルンバパパ!」と保育園友達が言うのを聞き、ほかのお母さん方が「えっ、あれ、ルンバパパなの?! すごい!!」と目を丸くしている。みなさん、夫の思いがけない敏捷な動きに、相当びっくりしているようでした。* * * * *帰宅後もルンバは悔しがっていた。その気持ち、忘れないでほしいと思った。とりあえず「馬さん走り」は封印しようぜ…。(ルンバ5歳5カ月/パルタ2歳4カ月)