カテゴリ:長野県
{長野物語}
僕はその当時、まだ140cmも無くとても小さかったけれど、走る事が得意で好きだった。夜になるとランニングシューズをはいて狭い空の下の狭い道を走っていた。春夏秋冬いつでも夜空の星が綺麗で、東京では星が見えないなんて嘘だと思いながらテクテクと走っていた。星が好きで星の動きを良く観察していたけれど不思議と星座に興味が無くただ単に光る星を純粋に好きでいた。 しばらく走ると疲れてきてしまって一人で夜道を歩いた。そのとき、ふと近所では一番高い山と言われている山の中腹に、上下左右に動く光を見つけた。山の中を動いている光。たとえばあれが山の中を動く人の懐中電灯だったら、その人は木と木の間をものすごい速度で移動し、上下数十メートルもジャンプしたり下ったりしていることになる。 たとえばあれば山の中を動く人の懐中電灯だったら、あんなに光に強弱まばらな懐中電灯は不良品だと思った。 僕は 「ひとだまだ!!」 と一人声を上げ、後ろを振り向くことすら出来ないくらいに怖くなり力ある限りの速度で走った。家がとても遠く感じたけれど頑張って走った。とにかく怖くて、心臓が今にも胸を突き破りそうだった。 家に帰ってお母さんとお兄ちゃんにそれを話した。我家からもその山は見える。でもそこには何の光も無く、何だか怖いながらも残念だった。でも、お母さんもお兄ちゃんも僕を信じてくれた。お母さんが言うには、ひとだまは間も無く天へ帰る人が準備をしているらしく、僕はそれが自分の知っている人なのかどうなのかがしばらく気になった。 数日後近所のおばあちゃんが亡くなった。申し訳ないけれども安心してしまった。綺麗な星の光と、青白く動くあの光も今となっては僕の心の中で大切な宝物となっている。 (次の日からははお兄ちゃんと一緒に走ることにした) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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