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行きかふ人も又

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2006.04.12
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カテゴリ:映画

1992年、ボスニアの片田舎。セルビア人の技師のルカはこの村に鉄道を敷くためにやって来た。だが、突然内戦が勃発。息子ミロシュは軍に招集され、おまけに妻まで別の男と駆け落ちしてしまう。一人きりとなってしまったルカ。そんなある日、ミロシュが捕虜になったとの報せが届き、村人に捕まったムスリム人の看護師サバーハをミロシュとの交換要員として、ルカが身柄を預かることになるのだがー。

‘捕虜と恋に落ちた’という実話をもとにして作られたコメディタッチのラブストーリー。
ユーゴスラビア出身のクストリッツア監督らしい、当時の紛争の悲劇を織り交ぜた風刺を込めた作品で、独特のユーモアは最高にシュール!自身も参加している音楽は気の抜けるような長閑さで、一度耳に触れると離れなくなるほど魅力的。「黒猫・白猫」「アンダーグラウンド」に次ぐ良い雰囲気の新作だった。

始まりのなんともいえない、どこまでも牧歌的な家族や村の情景はとにかく手放しで楽しい。そこから、次第に紛争による爆撃が始まり、サッカーで将来有望だった息子が招集され、家を失う件まで、一気にみせる展開もさすが。
家族を失い、鉄道への夢を失った、そこにあるであろう悲しみや悲劇を、軽快に笑い飛ばす。一見のんきな作品でありながら、切実な思いや爆発的な怒りをしっかり込めるクストリッツア節が好き。

そして恋。
戦争の勃発でなにもかも失った中年の主人公が、敵側の美しい捕虜を息子と交換するために預かるのだが...ひとつ屋根の下で暮らすふたりに、毎晩決まって起こる激しい爆撃。それは恐怖と特殊なシチュエーションによる、恋の始まりとなっていく。
敵であることに戸惑い迷い、離れてはみても別れられないふたりは、いつしか捕虜の交換という目的を超えて愛し合う。が…駆け落ちした本妻の突然の帰宅と、抗争の鎮圧を迎えて、共に抱いた夢が音を立てて崩れていってしまうのだった。

ノー天気に描きながら、要所要所を抑えてぐっと感じる作品。戦争時の銃器による攻撃シーンなども意外と使われていて、もちろんこんな生易しいものではないはずだけど、当時のボスニアを感じ取ることができる。その無意味さも。

ちなみに音楽と合わせて味があるのが、数多く登場する動物たち。今回も線路の上で涙を流しながら自殺しようとするロバ(理由は失恋)や、主人公が飼っている犬と猫、馬にアヒルなどなど多数登場。そして名演技をみせてくれる。ラストでは失恋したロバ君が、とっても大事な役割を担ったりして、なくてはならない名脇役たちにもぜひ注目。


監督  エミール・クストリッツァ
脚本  エミール・クストリッツァ 、ランコ・ボジッチ
撮影  ミシェル・アマテュー 、ミシェル・アマチュー
音楽  エミール・クストリッツァ 、デヤン・スパラヴァロ
出演  スラブコ・スティマチ 、ナターシャ・ソラック
     ヴク・コスティッチ  、ヴェスナ・トリヴァリッチ
     





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Last updated  2016.02.01 22:42:00
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