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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イタリア映画
ポー河沿いのある食堂。そこに流れ者のジーノが現れ、店の主人ブラガーナの年の離れた妻ジョヴァンナは彼に一目惚れする。深い関係になった二人は一旦は別れるが、やがて再会し、夫殺害を企てるのだが…。 アメリカのサスペンス小説をイタリアに置き換えて映画化した、巨匠ルキノ・ヴィスコンティの処女作です。 私が知っているヴィスコンティとは、また違った趣のサスペンスでしたが、長編処女作とは思えないほど存在感を感じました。 描かれるのは上流階級ではなく庶民、しかし色気と危うさは後の作品そのままに、もつれ合う男女の情念を核に展開していきます。 もっとサスペンスチックなものを想像してきたので、意外ではありましたが、刻々と変化してゆく感情の描写に重きを置いた、重量感たっぷりの作品。 偶然にも出会ってしまった男女が、愛し合い、不倫の果てに殺人まで犯してしまう――― 巷で起こっている事件も、この映画も大差ないのかもしれませんね。 出会わなければ・・・ そんなこと思ったところで、罪を犯してしまっては後の祭り。 ジーノとジョヴァンナのように、罪悪感や恐怖、不信や裏切りで、身を滅ぼしてしまうのでしょう。 運良く罪を逃れてほくそ笑んでいるよりも、苦しみ抜いた末、相手を憎みながらでも愛を貫こうと決心するほうが人間臭くて良い。 映画としても、サスペンスより人間臭さに焦点が当てられた面白みがあって、よりラストまで‘痴情のもつれ’なるものを楽しむことができました。 人間てなんとも情けない生き物ですね。 半世紀以上前という時代背景を通り越して、情けなさは今も変わらない気がする。 それこそが「郵便配達は二度ベルを鳴らす」が幾度も映画化され、長く愛される理由なのでしょう。 オーソドックスな展開は分かっていても、感情移入しやすく身近です。 特別斬新なものは感じなかったけど、シーンごとのインパクトと映像の濃さは存在感あるもので、ここからどんな風に「ベニスに死す」や「地獄に堕ちた勇者ども」へと繋がっていったのか、観て知るのが楽しみになりました。 監督 ルキノ・ヴィスコンティ 原作 ジェームズ・M・ケイン 脚本 ルキノ・ヴィスコンティ 、マリオ・アリカータ ジュゼッペ・デ・サンティス 、ジャンニ・プッチーニ アントニオ・ピエトランジェリ 音楽 ジュゼッペ・デ・サンティス 出演 マッシモ・ジロッティ 、クララ・カラマーイ フアン・デ・ランダ 、エリオ・マルクッツオ モノクロ(117分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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