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テーマ:本のある暮らし(3317)
カテゴリ:本(編集)
主人公の倒錯した性を主題に扱っているため、アメリカの出版社から断られ、初版はパリで刊行されたという「ロリータ」。キューブリックが1962年に映画化したものがとても好きで、読んでいる間じゅうチャチャチャのリズムが耳に蘇った。
映画がしっかり原作を踏んでいるのは、そのはず、ナボコフ本人が脚本を手がけていたからだった。新訳が出たけれど、今回読んだのは大久保康雄さん訳のもの。 キューブリックの同名映画が好きなのは、軽妙な音楽の流れるなか、内容のわりにユーモラスにハンバートの倒錯した少女への愛を描いているところ。憎めない独特な魅力がある。わるいけれど笑えてしまうハンバートの滑稽さがいい。そして一途さも。 現代使われるロリータという言葉は、随分下等なものに成り下がっているけれど、ハンバートのロリータを愛する気持ちは何よりも深い。それゆえに、大の大人が少女に踊らされていることが惨めなのだけれど、そういう生き方をしたっていいじゃない!そう思えてくるのだ。 ハンバートの言葉遊びの数々がかなり楽しい。頭の回転が早い秀才、なのにことロリータに関しては、まるでダメになってしまう悲しさ、、。キューブリック版映画よりも更に濃い世界がある。これは絶対にポルノではありえない。 哀れなハンバート・ハンバート。自分をハンバーグ・ハンバーグとか言ってしまう彼を創造したナボコフが、最後にこの作品の生まれた経緯を「インスピレーション・コンビネーション・インターリアクション(霊感と組み合せの相互反応)」なんて言葉遊びで返すのがおもしろすぎる。ユーモアは人生に欠かせない潤滑油だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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