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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:映画
リスボンのスラム街フォンタイーニャス地区。その移民街に住む一人の女性・ヴァンダの部屋を中心に、再開発のために取り壊されようとしているスラム街に暮らす人々の日常を赤裸々に捉えた衝撃のドキュメンタリー。
ポルトガルの取り壊されつつある、スラム街。そこに住むヴァンダの部屋を舞台にした、真実の生活を描きます。 監督は、ジャンキーのヴァンダとその家族、そしてスラムに住む人々の生活を、2年に渡ってスラムに住み撮りあげたそうです。 咳こんでは、薬、少し働いてはまた薬。 その繰り返し。 誰からの救いもなく、住まいさえ奪われていく貧しい移民たちの暮らしは、それでもちゃんと生活感がある。 その日をその日を生きてるけれど、悩んだり考えたり不公平を怒ったり、私たちとあまり変わりないとも思えます。 ただ貧しく、そのやりきれなさを麻薬でうちゃっているだけ。 痛々しいほど止まらない咳の音が、いつも響いています。 肺なんてきっと真っ黒であろうヴァンダは、病に侵されているのかもしれない。 これほど肉体を痛めつけても、人は生きていけるのだと、変なところで感心してしまうほど、自分を大事にしないヴァンダ。 しないのじゃなく、できないのかもしれない。 生きる気力を感じないから、それこそ見ていて楽だけど、ほんとうは若いであろうヴァンダのくたびれた表情と痩せこけた体がとても痛々しいです。 切り取られた絵画のように絵になる映像が3時間も積み重ねられていきました。 光と影。 これは人生にもいえること。 まさしく影である人々の、その影に浮かび上がる日々は時に光を帯びる。 考えて映し出される色彩のセンスとか、陰影の美しさは一見の価値があると思います。 救いはヴァンダを見つめる母の優しいまなざし、そして野菜たち。 八百屋を営む一家のくすんだ暮らしに、鮮やかで新鮮な野菜が彩りを添えていることが、わけもなく救いとなってしまう映画でした。 どんな変化も訪れない淡々としたドキュメンタリーの中に、人の限界が見えます。 彼らに‘生きてる意味’なんて答えられないのかもしれない。 それでも麻薬にすがってでも生きている人々の暮らしは、果たして競争社会に比べたら楽なんだろうか・・・ 戦場よりは楽なんだろうか・・・ わたしには、ただベッドに寝そべり、薬をやり続ける、終わりのない苦しさが、すごく辛いものとして映りました。 ポルトガル発のドキュメンタリー。 3時間と長いけれど、見て損はないと思います。 監督・脚本・撮影 ペドロ・コスタ 製作 フランシスコ・ヴィラ=ロボス 、カール・バウムガートナー アンドレス・ファエフリ 出演 ヴァンダ・ドゥアルテ (カラー/180分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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