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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:アメリカ映画
偏見や差別意識がごく普通に存在した50年代の、コネチカット州。 キャシー・ウィテカーは誰もが認める理想の主婦。一流企業に勤める夫フランクの貞淑な妻としても、良き母としても、地域社会から一目置かれていた。 だがある日、残業のフランクのもとへ夕食を届けに行った彼女は、そのオフィスで見てはならない夫の秘密を知ってしまう。以来、心の安定を欠いたキャシーを、新しくやってきた黒人の庭師レイモンドが気遣うようになり、2人は次第に打ち解けていくのだったが…。 観終わって血がざわめくいい映画でした。 こんなに良質の作品に出会えるのは、年に何本もありません。 この年、アカデミー作品賞を獲ったのは「シカゴ」。 スケールからいってもそれは当然かもしれないけれど、私はこちらのほうが好きです。 作品賞でなくとも、せめて主演女優賞は獲ってもおかしくない気がするのに・・・ それくらい絶賛したいジュリアン・ムーアの好演でした。 ヴェネチア国際映画祭では女優賞を受賞しています。 ヴィットリオ・デ・シーカの「ひまわり」に感動した時のよう。 現代版「ひまわり」のようなラストシーンには圧倒されるばかりで(オージュだったのかもしれません)、この作品にもぴったりはまりますね~ いい映画でした! ハッとするほど美しい自然の情景、色・いろ・色。 冒頭から一気にエルマー・バーンスタインのノスタルジックな音楽に引き込まれて、ラストまではあっという間でした。 良妻賢母で美しいキャシー。 彼女はそれだけじゃなく、優しさも美しい心も持っています。 しかし、順風満帆な人生の半ばにして突然、夫が同性愛者であることを目撃して知ってしまうのです。 ガタガタと崩れはじめる理想の生活。 病気を治したいと望む夫に、静かに治療の様子を見守り続けるキャシーは、何処にそんな力が?というくらいの、忍耐と寛容とでもって尽くします。 文句ひとつ言わず、夫を信じて、パーティの用意や友人との付き合い、家事も育児もすべてこなしてきたのに・・・・ 抗うでもなく泣き叫ぶでもなく、目を開いて心を開いて、正面から素直に向かってきたのに・・・ 運命は悲劇のほうへと転がってゆくのです。 キャシーと夫のフランク 仲睦まじく見えたのだが・・・ 黒人の庭師・レイモンド そんな彼女の良き理解者となるのが、黒人の庭師レイモンドでした。 まだ偏見のある時代に、互いに心を開いて語り合うようになる二人に唯一の希望を見る・・・ 緑の小道で散歩したり、黒人の店でダンスしたり、絵画を観たり。 さりげない素敵な場面がいっぱいです。 幸福な明るさから、超ド級の悪夢(夫が同性愛者だったこと)へ、美しい自然の中へ。 物語は滑るように流れていくけど、最後まで主人公が素晴らしい女性であることだけは変わりません。 ブルジョアな暮らしを当たり前のようにしてきて、どちらかといえば依存してたキャシーが、ひとりの黒人男性と知り合って、悲しい出来事、夫との離婚を経て、もっと素敵に生まれ変わってゆく物語。 精神的に自立していくのを見つめながら、本当に応援したい思いでいっぱいになります。 レイモンドとの未来は、ご覧になってからのお楽しみですね~ ひとつひとつのエピソードも、短尺ながら丁寧に描かれています。 情感たっぷりで、切なさはさりげなくて、音楽も素晴らしい――― 完全ノックアウト、こういう映画大好きです。 監督・脚本 トッド・ヘインズ 製作 ジョディ・パットン 、クリスティーン・ヴェイコン 音楽 エルマー・バーンスタイン 出演 ジュリアン・ムーア 、デニス・クエイド デニス・ヘイスバート 、パトリシア・クラークソン (カラー/107分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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