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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:映画
ブルジョワ少年が使った一枚の偽札。それを掴まされたカメラ店の夫婦は燃料店の従業員イヴォンへの支払いに、その偽札を使う。なにも知らず告発された彼は写真店を訴えるが、店員ルシアンの偽証で責任を負わされ失職、その後、強盗に加担して3年の刑を言い渡されるがー 巨匠ロベール・ブレッソンが悪と狂気の極限を追求し描いたヒューマン・サスペンス。キューブリックと同じ1999年に亡くなったフランスの巨匠ロベール・ブレッソンの作品です。 この監督、観るのは初めて。同時期に撮っておいた「少女ムシェット」も期待できそうです。 若者が自暴自棄に陥り犯罪にはしっていく姿を、淡々と殺伐とした中に描きます。 いったい誰が主人公なのか、冒頭ではまだ知らされず、物語を追っていくうちに燃料店の従業員イヴォンがそうだと分かります。 愛らしい妻と娘がいて、偽札のことがなければ普通の暮らしがあったかもしれない、それほど狂気を感じさせない主人公。しかし、だからこそ、突然歯止めの利かなくなり冷徹な犯行を重ねる彼が余計に恐ろしくて、観る者をゾッとさせるのでしょう。 こちらもフランスの暗部を真摯に捉えた作品。真っ当に生きている人はほとんど出てこず、狡猾なカメラ店の夫婦や店員ルシアンなど、自分さえよければいいと思って生きている人ばかり。冒頭のブルジョワ少年が犯した罪をお金で解決する母親、実刑をうけたイヴォンを見捨ててしまう妻・・・だれもかれもが無機質に感じられます。その削がれた感情は、映像が物質に置き換えらることでさらに強くなっていくよう。 他人にも身内にも裏切られ、立ち直ることもできずに、静かに悪の道へ進んでいってしまうイヴォン。心の動きは見えないけれど、もしかしたら良心は残っているのかもしれない、そう思える瞬間がありました。 でも、結局は差し伸べられる手はなにもないまま自殺を図り、一命を取り留めても、出所後に酷いやり方で人を殺めてしまうのです... 刑期を終えた彼が身を寄せた家で、その一家の父親が奏でるピアノ演奏が突然耳に飛び込んできます。音楽さえ排除されていたなかで、突然の情緒を感じるシーン。ラストへ効果的に繋がっていくようでした。 殺伐として、無味乾燥としてるからこそ、くる衝撃も大きい。 とても短い映画でしたが、作品自体の持ってる凶暴さは並大抵ではないのかもしれない。そう思った作品でした。 監督・脚本 ロベール・ブレッソン 製作 ジャン=マルク・アンショ 原作 L・N・トルストイ 音楽 ヨハン・ セバスティアン・バッハ 出演 クリスチャン・パティ 、カロリーヌ・ラング バンサン・リステルッチ 、マリアンヌ・キュオー (カラー/85分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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