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2007.06.12
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カテゴリ:フランス映画


  1920年代。フランス領下のインドシナに暮らす貧しいフランス人の少女・。だが、富豪の中国系青年に目を付けられたときから、彼女の家庭には大金が転がり込んでくるようになった……。M・デュラスの自伝的ベストセラーを映画化。


 
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  先日「南京の基督」を観てから、どうしても再見したくなった映画です。
学生の頃初めて観て以来、なんとなく心に残ってきた作品。
いま原作を読んだ後で再見しても、変わらない良さを感じました。
なんといっても、フランスの少女の出で立ちが忘れられない。
黒いヒール、三つ編みに結った髪、男物のボウシ、破れた絹のスカートに真っ赤なルージュ。
どれもボロボロなのに、その美しさのインパクトはとっても大きいものでした。

あの頃は原作も知らず、ただこの幼い彼女が持ってる生の迫力と美に圧倒されたのだけど、原作者デュラスが、自分を自分たらしめるものとしてそれはあったのだと――
わかって更に、好きになりました。


フランス領下のベトナムで生まれ育った主人公。
父を病気で亡くしてからは、貧困のために崩壊した家族とすさまじい暮らしをしてきました。
豊かな暮らしを夢見て母親が買った土地は、水浸しの不毛の地。
財産も希望も失って、精神に異常をきたしつつある母は、上の兄しか愛せないのです・・・

お金の為に富豪の中国人についていった少女。
悲しみはいつものこと。こうなることは母や兄にいずれ求められていたはず・・と思う。
出会った時から、いつも黒塗りの車で彼女は運ばれていきます。
ショロンの中華街で愛し合う時も、学校への行き帰りも。
そして別れの直前までずっと。



サイゴンの寮から、田舎町ザナックの実家へ帰る時。
そこは悪夢のような生活が待っています。暴力と貧困で荒みきって。
けれど、中国人の愛人と過ごす毎日も決して幸せではありません。
幼さの残る主人公が、ぶれない自分を持ち続けてることに心動かされます。

インドシナの蒸し暑い茶色の情景が、あまりに鮮烈に残る作品です。
逢引を重ねるショロンの一室で、鎧戸から洩れるオレンジの光と影、騒がしい雑踏、喘ぎ声。
どれも今でも琴線に触れました。

中国の男が泣いて別れを惜しもうと、気持ちは揺れません。
けど少女の思いは分かる気がする。
フランスへと向かう船の中で、ショパンを聴いた少女がふいに涙を流すシーンに、やっぱり変わらない切なさを感じました。



原作を読んでみると、他の著作と絡む複雑さや、現実とは違う独自の世界観がありました。
でも映画がダメとは思わない。
読むきっかけになったのは、見挟んだ「絶対に映画化できるわけがない!」という強い言葉だったのだけれど。
ジャン=ジャック・アノーらしい雰囲気ある、ある種甘美な映像や、少女を演じたジェーン・マーチも含めて、やっぱり好きな映画です。

    L'AMANT


マルグリット・デュラス――すごい女性のようです。
映画も撮っているということで、いつか観る機会もあるだろうか・・・



 
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 監督  ジャン=ジャック・アノー
 製作  クロード・ベリ
 原作  マルグリット・デュラス
 脚本  ジェラール・ブラッシュ 、ジャン=ジャック・アノー
 音楽  ガブリエル・ヤーレ
 ナレーション  ジャンヌ・モロー  
 出演  ジェーン・マーチ 、レオン・カーフェイ 、メルヴィル・プポー
      リサ・フォークナー 、アルノー・ジョヴァニネッティ

  (カラー/116分)








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Last updated  2007.06.26 13:50:03
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