|
テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:映画
女親方から借り受けた“シクロ”で生計を立ている青年(レ・ヴァン・ロック)がいた。ある日、彼はヤクザたちにシクロを盗まれてしまい、女親方の護衛の若いヤクザに匿われる。裏社会に足を踏み入れた青年は、次第に悲劇へと巻き込まれていくのだった―――。
ヴェネチア映画祭、金獅子賞受賞作品。 死ぬまでに観たい映画1001本のなかの一本。 おもしろかった。ベトナムの裏社会を垣間見る、貧富の差がイタイ本作は異色の青春ドラマ。 交通事故で父を亡くし、年老いた祖父と、姉と妹の4人で暮らす主人公。女親方から高額で借りているシクロで日々の生計を立て、家族を支えてきた。 しかし、街のヤクザにシクロを盗まれてしまい、仕方なく女親方の隠れ家に住み、ヤクザの手伝いをする羽目になるのだった。 裏社会で生きる男と女。女は売春でやくざを支え、男は血なまぐさい暴力の中で生きている。 何でもありの世界に足を踏み入れた、素朴な青年の怯えを麻痺させる日々。どっぷりと犯罪に浸かったあと、それでも日常は、確実に彼の元に戻ってくる――。 物語は淡々と、様々な人物の日常を捉えていた。生まれつき障害を持った子を育てる、母親の一面を持つ女親方。父に勘当された詩人と呼ばれるヤクザ。詩人のために客をとる主人公の姉。それぞれに痛みながら生きている彼らに、ベトナムの暗部が見えてくる。 幻想と虚構の世界観、ハッとするような映像表現がかなり魅力的だ。 詩人の存在感が薄いのだけは、ざんねん。優しさも愛情も虚無感も伝わりきらなかったのだ。 主人公の姉を愛しているのか、それさえわからなくて、どっちつかずで、突如怒りに奮える件に汲みできなかった。 今までのことが嘘のように、また、家族4人で暮らし始めるであろうラストが好きだった。彼は無事に帰還したけど、こんな恐ろしい部分に触れて、おぞましさと一緒に何を感じたのだろう。羽目を外して暗部を覗いたとき、生きて帰れるなんてきっとごく一部。 生きて帰った、強い生のパワーと、ドンパチしないヤクザが新鮮だった。 監督・脚本 トラン・アン・ユン 製作 マルク・ピトン 撮影 ブノワ・ドゥローム 音楽 トン=ツァ・ティエ 出演 レ・ヴァン・ロック 、トニー・レオン トラン・ヌー・イェン・ケー (カラー/128分/フランス=ベトナム=香港合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画] カテゴリの最新記事
|