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行きかふ人も又

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2007.07.14
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  1965年、スカルノ政権下のインドネシア、ジャカルタ。政権の内部抗争を背景に、オーストラリアからやって来たジャーナリスト(メル)と、英国大使館職員の女性(シガーニー)との愛を描く。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  インドネシアという国にも過酷な歴史があったのですね。
スカルノという名はよく耳にしてきましたが、この映画の背景となっている「9月30日事件」は知りませんでした。
軍事クーデター未遂事件後と、首謀者・共産党勢力の掃討作戦などの総称だそうですが、まさに酷い時代です。

ピーター・ウィアー監督はこの前年の「誓い」でも、オーストラリアで演劇を学んでいる俳優メル・ギブソン主演で骨太な戦争映画を撮っています。
人間ドラマとしてもすごく深みのある秀作で、他には「刑事ジョン・ブック/目撃者」「いまを生きる」など、雰囲気のある良作が多数。
未見のものも多いので、是非手に取りたいと思いました。


若きメルと、シガーニーの共演。
異国の土地へやってきた若き記者の男ガイと、帰国間近の大使館職員の女ジル。
ギリギリのところで強烈に惹かれあう様を、じっくり見せてくれます。
男はオーストラリア人、女はイギリス人、舞台はインドネシア。
動乱のさなかに芽生える愛を、ふたりの共通の友人であるカメラマンの男・ビリーが、タイプライターの前で物語を紡ぐように語っているサスペンス調の展開です。
小人症のビリーは、人がよく、方々に顔の利く、謎の一面を持った男。
彼はジャカルタに集まる様々な人の情報を握り、時に操り、何かの目的を持って、入国して間もないガイと行動を共にしていきます。
ヤワな彼の精神をたたき上げ、ジルと引き合わせ、愛し合うよう仕組むのもビリー。
でもなぜ・・・?
謎の部分は続き、緊張感ある展開が続いていきます。

ここで素晴らしいのはビリーを演じた、リンダ・ハント。
男性ではなく小柄な女優さんです。
文句なしの演技で、この年の助演女優賞を受賞しています。
彼の持つ苦悩は、並大抵ではなく、隠された秘密が見えてきたとき、胸が打たれて仕方ありませんでした。
彼の生き様、彼が望んでいたこと、その願いや祈りが、作品全体を高尚に高めてくれているようです。
ビリーの死の運命にぐっときます。。


 
image.jpg  programme_3799.jpg

「ガイに担がれカメラを回すビリー(リンダ・ハント)」     「ガイとジル 惹かれあうのに時間は掛からないが・・」


独立宣言がなされてから20年、それでもなお市民の生活はどん底で、飢えと売春婦とであふれかえる国。
決して国民や農民を救うことができないスカルノ。
スカルノの経歴をみただけでは、酷い人という感じを受けません。
いまだに国民には愛されていると、ウィキペディアには書かれていました。
けれど、本編に登場するスカルノは、飢えに喘ぐ国民をよそに、女好きで飽食の人―というイメージで描かれています。
落ちぶれてきたころのスカルノなのでしょうか。
政治的な面を詳しく描いているというよりも、動乱の様子、雰囲気、欧米人が身の危険を感じる身ぶるいするような恐怖感が前面にきています。
それは骨太なドラマであっても、メインには恋愛を据えて描いているからなのかもしれません。

国が動いたその時、欧米人の主人公らがとった行動とは――
やっぱり、逃げてしまうものなのでしょうか・・・
恋愛でいえばハッピーエンディングだとしても、決して後味のよい結末でない、濁った後味を感じずにいれませんでした。





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 監督  ピーター・ウィアー
 製作  ジェームズ・マッケルロイ
 原作  クリストファー・J・コッチ
 脚本  デヴィッド・ウィリアムソン 、ピーター・ウィアー
      クリストファー・J・コッチ
 撮影  ラッセル・ボイド
 音楽  モーリス・ジャール
 出演  メル・ギブソン 、シガーニー・ウィーヴァー
      リンダ・ハント 、マイケル・マーフィ 、ベンボル・ロッコ
      ドミンゴ・ランディホ 、エルマンノ・デ・ガズマン

    (カラー/116分)
   





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Last updated  2007.07.21 20:33:05
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