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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:オーストラリア映画
文化大革命のころの中国は何度見てもおそろしい。 中国に驚かされるのはいまも昔もかわらないけれど、毛沢東の時代の中国に生まれなくてよかったとは、ほんとうにおもう。 (あらすじ) 文化政策により幼くして家族と引き離され、バレエの英才教育を受けて、その後アメリカに亡命、一流ダンサーとして花開いた実在のダンサー、リー・ツンシンの、揺れ動く心の軌跡を華麗なバレエ・シーンとともに綴る――。 山東省の貧しい村に生まれたリー・ツンシンは、バレエのバの字も知らない子どもだった。ただ柔軟な身体だったから選ばれ、機械的スパルタ教育を施された、当時の中国という国がなかなかに怖ろしく描かれている。 芸術としてのバレエではなく、国益のためのバレエを強制されていた時代。 北京舞踊学院から、研修生としてアメリカに渡ったのは青年期。一瞬にして心を奪われた西洋の自由は、酷いと吹聴されていたのとはまったく違う、素晴らしいものだった。 異国にも慣れ、最先端のバレエ教育と二度目の恋を経験して、短い自由を謳歌するツンシン。しかし、確実に帰国の日は近づいてくる。 当時の中国は、一度国に戻ったら二度と外国へは出られなかった。恵まれたバレエ環境を捨てられない彼が選んだのは、恋人と結婚して永住権を得ること。二度と祖国の地は踏めない覚悟で・・・・。 帰国命令に背いたツンシンに、中国領事館が与える圧力がまたおっかない。実話だというのだから、なおのこと怖ろしい。彼は領事館に監禁され、一時は強制送還されそうになるが、バレエ団の主任ベン(ブルース・グリーンウッド)や妻や友人ら、そして弁護士フォスター(カイル・マクラクラン)の協力で、アメリカへの亡命が認められる。 とまあ、内容的にはこんなんで、とても真摯な実話のドラマ。 ツンシンを演じているのは、ロイヤル・バレエ団のツァオ・チー。映画初出演とは思えない堂々たる演技で、幾度も挿入される華麗なダンスシーンはさすがに見ごたえあるし、バレエ好きでなくても魅了されるにちがいない。 ただ、ツンシンの恋の場面だけは、あれでよかったのかなぁ。恋に落ちる場面は唐突で、ふたりのシーンは少ないし、見ようによってはグリーン・カード取得のための入籍に見えてしまうではないか。しかもあっさり仲違いして離婚・・・・やっぱりあまり考えなく結婚しちゃったんじゃない、若気の至りじゃない・・・・とか意地のわるく取れる演出になっている。 どの道を行き来するかは どの人生を選ぶかによる。 大好きな『春にして君を想う』の台詞がぴったり。バレエをやっていくと決めたツンシンの人生は、まさにこの通りだったんじゃないかな。たとえ祖国や家族に二度と会えないことを意味するんでも、バレエの道を選んだ。 のちにアメリカに招かれた両親は、息子との再会を果たし、ツンシンは故郷へ帰ることが許されるのだけれど、それは予期しない幸福だったにちがいない。 監督 ブルース・ベレスフォード 原作 リー・ツンシン 『毛沢東のバレエダンサー』 脚本 ジャン・サーディ 音楽 クリストファー・ゴードン 出演 ツァオ・チー ジョアン・チェン ブルース・グリーンウッド アマンダ・シュル (119min) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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