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カテゴリ:イタリア映画
若きジャンニは、出産で恋人を失い、ショックで赤ん坊から逃げだします。 障害を抱えた息子パオロを育てたのは、亡くなった母親の家族。 15年後―――一度も会ったことがないパオロを、ジャンニはミュンヘンからベルリンのリハビリ施設へ連れて行くことになっていました。 戸惑いながら、到着したリハビリ施設で、より重い障害を持つ少女の母親ニコール(シャーロット・ランプリング)と出会い、彼女との交流で、ジャンニの心は少しずつ変化してゆくのですが・・・。 障害のある家族を持つとはどういうことなのか、身をもって体験させられるような作品でした。 外面は、障害を持った我が子を顧みることなく、新しい家族を持ち、15年経ってやっと息子と真剣に向き合った、ダメな父親の物語。 でも、核にあるのは、障害者を家族に持つ人たちの苦悩に他なりません。 同情ではない、苦悩を知らされます。 パオロと過ごすうちに、戸惑いながらも、愛しいと思えるようになるジャンニでしたが、彼を待ち受けているのは大きな絶望感。 長い間、娘を介護し続けてきた女性ニコールは言います。 「娘は、時々深い遠いところへいく・・」と。 それは、どんなに愛していも、意思の疎通ができなくなるときで、交流がシャットアウトされてしまう時なのでしょう。 障害からくる、どうしようもない絶望のとき。 パオロを育てていけそうで、幸せだったジャンニも、突然怖ろしいほどの絶望と不安に襲われます。 ふらつき、一瞬我を忘れる・・・・ この不安や恐怖は、観客にも襲い掛かってきます。 一生障害と向き合うとは、身体的な辛さとは別に、この苦しみを耐え続けていくことでもあるのでしょう。 ニコールは娘が生まれてからの20年を「なにもしていない」と言いましたが、本当は「何も出来なかった」。 いつも病院にいて、普通の人が謳歌している自由な毎日を過ごせない。 普通に暮らしていては、経験することのない苦しさ。 終わりがない。 ニコールの極限の一言は、すべての鍵なのだと思います。 決して本気ではない、開放という名の想像の鍵―― 終盤に、ジャンニとパオロは、彼の初恋のペンフレンドに会うため、ノルウェーへ向かう旅に出ます。 たくさん笑っている親子に、希望を感じました。 ラストで、ジャンニが父親としての役目を果たしていくのだとわかったときは、嬉しかった。 ただ、その覚悟を決めた苦悩は、想像して余りあるものでした。 脚本が素晴らしいです。 これほど障害者の家族の苦悩を、まっすぐ受け取れた作品は初めて。 パオロが持っていた家の鍵は、そのまま父親の心を開ける鍵になったのでしょうね。 監督 ジャンニ・アメリオ 製作 エルダ・フェッリ 、エンツォ・ポルチェッリ 原作 ジュゼッペ・ポンティッジャ 『家の鍵-明日、生まれ変わる』 脚本 ジャンニ・アメリオ 、サンドロ・ペトラリア 、ステファノ・ルッリ 撮影 ルカ・ビガッツィ 音楽 フランコ・ピエルサンティ 出演 キム・ロッシ・スチュアート 、アンドレア・ロッシ 、シャーロット・ランプリング (カラー/111分/イタリア・フランス・ドイツ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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