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カテゴリ:台湾映画
台北の古い映画館“福和大戯院”では、閉館となるこの日、巨大なスクリーンにキン・フー監督の「残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿」が映し出されていた。 まばらな観客、スクリーンを見つめる2人の老人、舞台裏では足の悪い受付の女が、特別な思いを胸に、映写技師のもとへと向かっていた・・・。 お世話になっているracquoさんおすすめの作品です。 ツァイ・ミンリャン監督は、はじめて。 実在する映画館を舞台に描かれる、最終上映の間のつかの間の出来事――― ただ静かで、台詞少なく、動きはほとんどありませんが、そこに秘められた情感をたくさん感じ取ることができました。 放映されるは、傑作「残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿」。 本作にも出演のミャオ・ティエンは、こちらがデビュー作なのだそうです。 過去の名作に出演している老いた俳優がふたり、“福和大戯院”の楽日に居合わせた偶然について、語られることはありません。 再会したふたりの会話さえ、途切れるばかり。 劇場最後の日を惜しむ観客は、いないようにも見え、たぶんいつもと変わらない“福和大戯院”なのでしょう。 下心を持った怪しい日本人の男が、客に色目を使って館内を歩いているのも、珍しいことではないのかもしれません。 そんな中、足を引きずった受付の女だけが、ひとつ仕事を終えるごとに、振り返っては惜しむように、劇場を見つめているのでした――― 脈絡なく、断片だけど、ずっと漂っている哀愁は素晴らしい。 些細な動きしかない映像に、ずっと感じる美しさ。 落としたトーン、絵になるシーンばかり。 もしも、カメラを持たされても、こんな撮り方は絶対にしないしできないと思います。 固定されたカメラで、じっと、静かに、被写体を見つめる目線。 この根気、この気の長さ、監督の性格なのでしょう。 タルコフスキー作品をふと思い出しました。 じっと視線を投げかけている、その優しさは、とても真似できないような気がします。 そしてなかなか出会えない作風。 優しさと、シビアな冷静さを一緒に感じます。 受付の女は、最後の日、自由の利かない足で懸命に、目的あるこの一日を過ごしています。 それは、映写技師へ思慕の念を伝えること――― 詳しくは語られないけれど、淡い想いも描かれていました。 そして、映写技師も、同じように彼女のことを想っているのかもしれない・・・。 降りしきる雨が、涙雨には見えなくて、優しさ残るステキな小品でした。 監督・脚本 ツァイ・ミンリャン 製作 リァン・ホンチー 撮影 リャオ・ペンロン 出演 チェン・シャンチー 、リー・カンション 、三田村恭伸 、ミャオ・ティエン (カラー/82分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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