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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:フランス映画
ドイツ軍占領下のフランスの田舎で、敵兵と密通して断罪された過去を持つ女優が、ロケのために広島を訪れ、日本人の建築家と一日限りの情事を交わす。8月6日、原水爆禁止運動を背景に、二人は孤独な会話の果てに、戦争の悲劇を分かち合う――。 マルグリット・デュラス原作・脚本の会話劇。 原水爆禁止運動と反戦映画の撮影中という、ふたつの背景は、情事の甘ささえあっさりと飛び越えて、ふたりを現実の痛みへと引き戻していく。ノーマルな恋愛映画ではありません。 交わされる会話には、言葉にならない孤独と、決して癒えることのない戦争の傷痕。 原爆投下で家族を亡くした男は、「原爆の悲劇を知ったわ」という女の言葉に「君は知らない」を繰り返す・・・いつしか女は、敵国の兵と愛し合った過去を語り、ようやく、彼女もまた戦争による深い傷を負っていることに、男は気づく。 「ヒロシマを知らない」そう断言した男と、怖ろしい過去の記憶に今尚苛まれる女。ふたりは理解を超えて惹かれあうけれど、訪れるのは抗えない別離なのだった。 真夜中、いつまでもヒロシマの街を徘徊する女のあとを、離れがたく別れがたく男は寄り沿って歩いていく――。 あいだに投入される原爆記念館や、被爆者の写真、映像――それらが、フランスらしい甘い情事の会話と情景に溶け込んでいるのが、すごく奇妙でいて、そぐっているのが不思議。 ヒロシマの悲劇について、こんなふうに語りかける映画は、ほかにもあっただろうか。ソクーロフ監督の『太陽』でも感じたけれど、他国が撮った<日本の戦争を描いたもの>には、時々、邦画以上に日本のエッセンスを見事に描いたものがあるのかもしれないなぁと思う。とてもいい作品だった。 監督 アラン・レネ 製作 サミー・アルフォン 永田雅一 原作・脚本 マルグリット・デュラス 撮影 サッシャ・ヴィエルニ 高橋通子 音楽 ジョヴァンニ・フスコ ジョルジュ・ドルリュー 出演 エマニュエル・リヴァ 岡田英次 ベルナール・フレッソン (モノクロ/フランス=日本合作/91分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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