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行きかふ人も又

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2007.12.17
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カテゴリ:映画
 14歳のムシェットは病気の母親の代わりに貧しい家を切り盛りしながら、友達のいない孤独な学校生活を送っていた。ある日、森の密猟者の秘密を知ったのがきっかけで、思いもよらない絶望と孤立に立たされる。そんな彼女に残された選択はひとつしか残されていない―

とことん救いのない物語です。14歳の少女の生への絶望を描きます。
寒々としているのは映像と中盤の雨のシーンが長かったせいばかりではありませんね。少女ムシェットにも温度を感じられません。
救いを求めない反抗的な目つきは、周囲の大人に怒りをぶつけることもなく、大人にとっては助けてあげようと思える相手ではない悲しさ。同情なんか必要としていない生き方はやっぱり淋しいものです。

オシャレにいそしむ同級生たちと、交じわうことのないムシェットはいつもひとり。憂鬱な学校を抜け出して森を彷徨っているうち、森の奥へと迷いこみます。突然の雨に雨宿りをしていると、密猟者アルセーヌと森番の小競り合いの声を遠くに聞くのです。
夜が更けても森にいた彼女は、小屋へ戻るアルセーヌに見つかり、保護されます。
しかしそこで、彼から怖ろしい告白聞かされることになるのでした。森番を殺してしまったらしい、と、、

自分と同じはみ出し者を、つい信じて優しくするところが彼女の唯一の幼さでした。アルセーヌの突然の癲癇発作を看病し、今夜のことは内緒にすると約束します。
けれど・・・甘かった。そのまま、男に手込めにされてしまうのです。

唯一慕っていた母が死に、信じた大人に裏切られ、殺人事件は幻想だったと知る―
彼女の絶望はどれほど大きかったことでしょう。けれど、静かに涙をこぼしながら、孤独を深めていくばかり。怒りをぶちまけるどころか、隠れて感情を搾り出す。みんなの前に露わにできないのがもどかしい。
どうして爆発しないのでしょう、父親を責めないのでしょう。できないなら、このラストは、当然の結末という感じでした。

殺伐として無味乾燥としてるからこそ衝撃も大きい。以前ブレッソン作品を観たときの感想です。今回も同じ。どろどろしない澄んでいる悲惨さがありました。ひどく不器用で。
ラストシーンなどなんともいえません。晴れ着を胸に抱いて、池へと続く坂道を、何度も何度も転げ落ちるムシェット。
移動遊園地のバンピング・カーではしゃいだほんのひと握りの楽しかった時間と、それは同じ開放感だったのかもしれない。
そこはかとなく悲しいシーンです。



監督・脚本  ロベール・ブレッソン
原作  ジョルジュ・ベルナノス
撮影  ギスラン・クロケ
音楽  クラウディオ・モンテヴェルディ 、ジャン・ウィエネル
出演  ナディーヌ・ノルティエ 、ポール・エベール 、マリア・カルディナール
    ジャン=クロード・ギルベール

(モノクロ/80分)








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Last updated  2023.02.17 16:37:53
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