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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:スウェーデン映画
(あらすじ)中世のバラードを題材に、中世的情念の世界を描く。 ある日、豪農の娘カリンが教会に行く途中、森の中で3人の浮浪者に出会い、辱められ撲殺されてしまう。 屋敷に泊めた3人が彼らと知った父親テーレは復讐を遂げる――――。 豪農の夫(シドー)と敬虔な妻は、修道士の男や多くの使用人たちと豊かに暮らしています。 夫婦には年頃の美しい一人娘(ペテルソン)がいて、甘やかしながら慈しみ大切に育ててきました。 ある日曜日、遠い地にある教会へ蝋燭を届けにゆくことになったカリンは、お供に、養女インゲリ(リンドブロム)を伴って、笑顔で出かけて行きます。 インゲリは身重で、出産間近なお腹を抱え、一日中汚れまみれになって働いている、カリンとは正反対の娘。 子の父親はどこの誰とも言わず、望まぬ妊娠を憎み、同じくらい美しい世間知らずなカリンを憎んでいるのでした。 ついに憎悪に耐え切れなくなったインゲリは、同行を拒絶し、カリンひとりで薄暗い森を進ませるのです。 森で3人の浮浪者に出会ったカリンは、疑いもなく誘われるままに男たちに付いて行き、まんまと手篭めにされてしまうのでした。失意の果てに殺されてしまう。 それを物陰から偶然に見ていたインゲリは、止めに入らねばならないと思うのに、日ごろの憎しみがそれを許さず、黙って息を殺ずばかり・・・・ 登場人物みんなが、生まれてから身についてきた言動を繰り広げていくだけなのに、それがすべて、なるべくして悲劇へと向かっていきます。 誰にも止められません。 カリンを助けることができなかったインゲリにさえ、複雑で強い理由がある。 すべてが、神の御業といわんばかりの自然な演出が印象に残ります。 日曜日、子羊、最後の晩餐を思わせる食事シーン、天使のようなカリン・・・・。 たくさんの暗喩を感じさせる物々は、確実に意識して配置されています。 絵画のように額取られて見えるシーンもあり、底にあるのはキリスト教の世界そのもの。 様々なものを飲み込んで拡がったキリスト教が、いまこうして敬虔に眼前に現れても、見方を変えることはできませんが、純粋な信仰心は普遍です。 そんな思いが湧き水とともに心に満ちる、小品ながら良い作品でした。 † † † 監督 イングマール・ベルイマン 原作・脚本 ウルラ・イザクソン 撮影 スヴェン・ニクヴィスト 音楽 エリック・ノードグレーン 出演 マックス・フォン・シドー ビルギッタ・ペテルスン グンネル・リンドブロム ビルギッタ・ヴァルベルイ (モノクロ/90分/スウェーデン製作/JUNGFRUKALLAN) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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