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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イギリス映画
レスター少年や、メロディを演じたトレイシー・ハイドの当時の人気は、爆発的なものだったと聞きます。 今もなお、瑞々しい感性に溢れていて、どこをとっても眩しくてくすぐったい名作。 ザ・ビー・ジーズの楽曲に乗せて描かれる映像は、ビデオクリップのようでした。 典型的な中流家庭のダニエルと、貧しいながらもヤンチャなトムは大の仲良し。2人はいつもつるんで遊んでいた。そんなある日、バレエの練習をしている美しい少女メロディに、ダニエルは夢中になってしまう・・・。 小学生の恋は淡く、どこまでも純粋で、ただずっと一緒にいたいと願うだけ。永遠を信じている彼らの穢れなさといったら・・・軽く衝撃を受けました。 少年少女向けに見えて、じつは大人がみるべき映画でした。 貧困を嘲る富裕層、格式ばった教師たち、日々の生活にくたびれる大人・・・。 子どもは未来に希望を持てずに、大人になることを心のどこかで拒んでいます。親をみ、教師をみても、目指したい憧れがなくて、夢さえ持てません。 今が一番いい時だということを、よく知っている。 将来への不安を抱えた、大人になりかけの未熟な年頃だとしても、彼らにはわかっています。 「大人は、いろいろわかりすぎるから、大変なんだ」ということ。 わからないままでいい、こんな大人になるくらいなら――― そういう反発の気持ちを込めてつきつけた「ぼくたち結婚します」という台詞が、あまりにもピュアでたまりませんでした。 大人たちをやっつける爽快さ以上に、シチュエーションの妙に胸撃ちぬかれる気分。 墓地での初デートも、少年グループの爆弾作りも、縦笛とチェロの即興合奏も、なにもかもが瑞々しい。 郊外へちょっと歩けば、緑溢れる。のび放題の雑草が生えた空き地、鉄橋の下での悪ふざけ、荒れた墓地に集う子供たち・・・。 彼らの伸びやかな日々を見ていると、イギリスという国柄の魅力と、過去を想って、ノスタルジー気分いっぱいになります。 イギリス映画特有の上品さが、漂よっている。 11歳のふたりの恋は、バックに流れていた歌の歌詞のように、5月で終わってしまうのかもしれません。 いつかは、なりたくなかった大人に、なってしまうのかもしれません。 それでも、この時期にしかないものが120パーセント詰まった、青春のアルバムそのものだから、かけがえない。 幾つになっても観返せば確実に、胸の奥に広がる懐かしい情景を見せてくれる、そんな作品でした。 監督 ワリス・フセイン 脚本 アラン・パーカー 撮影 ピーター・サシツキー 音楽 ザ・ビー・ジーズ 出演 マーク・レスター ジャック・ワイルド トレイシー・ハイド (カラー/106分/イギリス/MELODY) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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