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行きかふ人も又

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2008.03.12
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カテゴリ:フランス映画

 ゴンドリー監督は『エターナル・サンシャイン』がとても良かったです。独自の精神世界を描き、臨機応変風変わりなところは変わりません。
『エターナル~』よりも遥かに自由に突き抜けてしまったような、奇想天外な物語は、今回脚本を自らが担当したせいか、より内的世界に没頭してしまったよう。見ているこちらは多少置いてけぼりにされながら・・・(笑)


 (あらすじ) 恋に不器用な冴えない青年ステファン(ベルナル)が、越してきた隣人の美女ステファニー(ゲンズブール)に恋をする。夢の中で恋愛を成就させ、次第に夢と現実を混同させていく様を描いたファンタジー・ラブコメディ。


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 幼い頃から、現実と夢の区別がつかなくなってしまう子だった、主人公のステファン。
一緒に暮らしていた父親がガンで死んで、メキシコから母親のいるパリにやってきます。
母親が大家をする子どもの頃暮らしたアパルトマンに住みつき、与えられたカレンダー会社でのつまらない仕事をこなすステファン。でもイラストレーターになる夢は抱き続けています。

そんなある日、隣の部屋に越してきた美女ステファニーと偶然知り合い恋に落ちるのですが・・・。咄嗟に隣人であることを何故か隠してしまい、嘘を土台にしたおかしな恋が始まるのです。

意気地なしで夢見がちで、自我に埋没しているステファンは、はっきりいってあまり素敵ではありません。きっと彼は監督自身を投影した青年で、ここに作り上げられたすべては、ゴンドリー監督の脳みそと心の中。
奇想天外でユニークで、独創性の塊である本作は、監督の自己満足だと言われても、きっと「その通りです」と笑って答えられてしまいそうな、それほど楽しんで作り上げたひとつのアートだと思います。

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戸惑うのは観客ばかりじゃなく、恋されるステファニーも同じこと。
ものを造りだすことが大好きな二人が、いつしか一緒に作品を作り、アートの世界で戯れ、発明品のタイムマシンで一秒だけ時をずらすことができるようになっても、一緒の時を共有するには、ステファンは夢見がち過ぎて、現実には難しい・・・・
どちらも悪くないのに、喧嘩になってしまいます。自分の殻から抜け出することができない限り、心は重なり合っていても、一つのサヤに収まることはできないのです。

夢のなか、願ったとおりの恋の展開を楽しむステファンは、いつまでも子ども。
昔のままの部屋に暮らし、小さなベッドで眠り、辛い現実を受け入れることがうまくできません。セックスに興味がないのも、その表れ。
夢は一種の理想や充足、夢から覚めて現実を認めない限り、彼はずっと真の大人にはなれないのでしょう。
ただ、恋する人との別れがあるばかり―――

面白いのは、ステファンが、それでも仕方ないと思っているところ。どんなに辛くたって、いまを捨てるつもりはない。迷いのない突き抜けたアイデンティティがあって好印象です。
もしかしたら、監督の大人になりたくない願望も、すこしは描かれているのかなと思ったりしました。

とにかく手作りのものに溢れています。まるで絵本『ミッケ!』の世界。私がいつかしたい、ものに溢れた暮らしは、ステファニーの部屋そのもの。素敵な部屋です。
人形劇、アニメーション、着ぐるみ、ダンボールアートなどなど、ありとあらゆる工作チックな魅力な世界に溺れて、とても楽しい。
内容よりも、ビジュアルが楽しめた作品でした。

出演作はほとんど知らないのにシャルロット・ゲンズブールが懐かしい。歳を感じるけれど、エキセントリックな主人公に負けない包容力で、取り留めない作品を包み込んでいます。



           
監督・脚本  ミシェル・ゴンドリー
製作  ジョルジュ・ベルマン
撮影  ジャン=ルイ・ボンポワン
音楽  ジャン=ミシェル・ベルナール
出演  ガエル・ガルシア・ベルナル  シャルロット・ゲンズブール  ミュウ=ミュウ
     アラン・シャバ   エマ・ドゥ・コーヌ

(カラー/105分/フランス/LA SCIENCE DES REVES)


 






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Last updated  2008.12.12 23:13:34
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