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カテゴリ:映画
ベルギーの新鋭リーフェン・デブローワーによる、ほろ苦くも心温まるヒューマン・コメディ。
知的障害を持つ次女ポーリーヌは四姉妹。ずっと彼女を世話してきた長女マルタが急逝し、ポーリーヌは三女ポーレットか四女セシールの間に引き取られることになるのですが・・・。 はじめマルタが住んでいるのは、代々暮らしてきた古風な民家。室内は茶色で揃えられ、真面目な長女がきっちりと世話をこなし、滞りなく日々が流れていました。 そんな単調な生活をするポーリーヌの憧れは、妹ポーレットのお店。大好きな花の模様の包み紙、鮮やかな色の布地や雑貨が並ぶその店へ、買い物に行く度、寄り道して叱られます。 赤やピンクで揃えられた花柄な妹の暮らしぶりは、花をこよなく愛するポーリーヌには夢のようなのでした。 ある日突然、長女が倒れ世を去り、ひとりになってしまうポーリーヌ。 彼女は当然、ポーレットの店で暮らしたいと言いますが、趣味のオペラもお店も忙しい彼女には、姉の世話は負担でしかありません。 それは末の妹も同じ。都会へ出てフランス人の恋人がいる四女セシールも、何かと理由をつけて世話を渋るのです。 “姉妹のどちらかが手厚く世話をしなければ、ふたりに遺産は遺さない” マルタの遺した遺言が功を奏してか、遺産欲しさにとはいえ、ポーリーヌと一緒に暮らし始めるポーレット。しかし、それは微笑ましくも苦労の連続。 30年も続けたオペラの本番を台無しにされて、彼女の怒りはピーク! いきなり四女セシールのもとへやってきて姉を置いていくのです。 結局ここでも、障害者の彼女を疎ましがるセシールの恋人に邪魔にされて、居場所はありません。ついにポーリーヌは思い立ち、お金と住所が書かれた紙を握りしめ、タクシーに飛び乗り、ポーレットの店へと帰っていくのでしたが・・・・。 純粋無垢な姉を愛しながらも、人生が台無しになると感じている姉妹は実に正直です。あとはもう遺産を放棄して施設に容れるしか方法はない。 チラシや包装紙のお花を切って貼った宝物のスクラップブックだけを、大事そうに抱えて、周りの人間の都合で幾つもの場所を点々とするポーリーヌは、文句も言わず、変化に身を任せながら、できれば花に囲まれたポーレットのお店で、大好きなオペラを聴きながら暮らしたい・・・そう願っているだけ。 知的障害のある人は周囲を温めて、なにかを与えて生きている。それは以前観た『家の鍵』でも感じたことでした。 田舎で暮らしても、都会で暮らしても孤独はあって、それを癒せるのは限りなく純粋なものであること。ポーレットにとって、それがポーリーヌだと気づいたように、与えては得られるいい関係が、ラストになっても、これから将来きちんと紡がれていくかはわかりません。 でも、ポーレットのような率直で自分を飾らない人は、少なくても表面だけで同情している四女セシールより、ずっと姉のかけがえない長所を大切にできるのだろうと思います。 けっこう辛辣、笑いは少し。 各姉妹の家や部屋が、その心を反映するかのように、象徴的にきっちりとわかれているのが面白い。茶色一色の落ち着き、華やかなピンク、温度のないモノトーン。 ポーリーヌの心にはいつも音楽が流れていて、それはオープニングからの花のワルツ♪のように、まるで穢れないファンタジーの世界に永遠にいる状態なのかもしれません。 だから彼女にとってポーレットの店や花畑はどこより居心地のいい場所だったのでしょう。 皆が幸せになるために、夢の国を失ってしまったとしても、それが現実。おとぎの国では生きていかれないし、そういう現実にいるからこそ、ポーリーヌの純粋無垢さが救いにもなる。 短尺で、初監督作品ながら、なかなか見事にまとめられていたと思います。 ありがちな設定で、ラストは唐突で尻つぼみに感じられても、小品ゆえのよさがありました。 四姉妹を演じた女優さんは、共に出演作はほとんどないようですが、とても好演していました! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 リーフェン・デブローワー 製作 ドミニク・ヤンヌ 製作総指揮 ジャック・ブーン 脚本 リーフェン・デブローワー ジャック・ブーン 撮影 ミシェル・ファン・ラール 音楽 フレデリック・ドゥヴレーズ 出演 ドラ・ファン・デル・フルーン アン・ペーテルセン ローズマリー・ベルグマンス ジュリアンヌ・デ・ブロイン イドヴィグ・ステファーヌ (カラー/78分/ベルギー/PAULINE AND PAULETTE) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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