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カテゴリ:イタリア映画
ピエル・パオロ・パゾリーニによる、ボッカッチョ(ボッカチオ)『十日物語・人曲』の映画化。 デカメロンとは、ギリシャ語の10日に由来しているそうです。 サドの『ソドムの市』に続いて、こちらのパゾリーニもキツイものがありました。 俗悪、非情、醜悪・・・気分が悪くなる反応も、狙ってのことだろうと思うと悔しいけれど、やはり不快になります。 権力主義への批判を描いたソドムも、時が経っても変わらない人間の愚かさを描いた本作も、裏にある比喩は理解できますが、あえてこの表現方法をとることに賛同する気持ちにはなりません。 気に入らない人はきっと多くて倦厭されたりもするのでしょうが、コアなファンには深く語られるのが、このパゾリーニという人なのでしょう。 現代のナポリに移して描かれる、小さな8つのエピソード。狂言回しの画家ジョットー役は監督自らが演じています。 性をテーマにしているので性描写は当然のように多いです。俗悪な世界を繰り広げていくなかで、時にすごく純粋な愛が見えるのだけれど、それさえ倒錯した愛。 欠如したモラルは、夫婦にも親子にも、俗社会を飛び越えて、修道院にも教会にも及びます。 俗悪さというものはけしてキライではありません。汚い映像だって。ただしそこに限りなくピュアなものや、ユーモアがあるのなら。 こちらのユーモアはそうとうブラックで、一番の体現者は、画家を演じた監督自身であったりします。コミカルな動きや個性、全体がもしこんな風であったなら、もっと近寄りやすかったかもしれない。 夫の留守に浮気を重ねる妻、罪深い若者が死に際におこなう涙ながらの懺悔、遺体から装飾品を盗む者たち、姦淫の罪をこぞって犯す修道女・・・短編集ともいえる幾つもの物語が、途切れることなく繋がっていきます。 最後のエピソードでは、亡くなって死後の世界へ足を踏み入れた男が、友人の夢枕に立ちあの世の様子を報告します。 天使とマリア様のいる神聖な世界を見、罪は裁かれるけれど、自らが重ねた姦淫の罪は一切裁かれなかった!そう驚きの報告をするのでした。 神も罪もありはしない。畏れるものはなにもない。そう知った友人の男は早速姦淫の罪を犯しに出かけてしまう・・・・。滑稽です。 ラストで修道院の壁画を完成させた画家はつぶやきます。 夢のほうが現実的なのに、どうして画家は描くのか、と。 それでもなぜ人は生きるのか――。そんな問いのようにも、聞こえてきました。 監督・脚本・出演 ピエル・パオロ・パゾリーニ 製作 アルベルト・グリマルディ 原作 ジョヴァンニ・ボッカチオ 撮影 トニーノ・デリ・コリ 音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 フランコ・チッティ ニネット・ダヴォリ アンジェラ・ルーチェ エリザベッタ・ダヴォリ シルヴァーナ・マンガーノ (カラー/108分/イタリア製作/IL DECAMERONE) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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