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カテゴリ:アメリカ映画
ジャームッシュの世界はクールで大好きです。『ダウン・バイ・ロー』『コーヒー&シガレッツ』などから、ずっと一緒のジャームッシュ組?の面々、ロベルト・ベニーニやトム・ウェイツ(主題歌)が最高にカッコイイ! タクシーを媒体にして、出会い別れていく人々の姿を、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの街を舞台にして描きます。(サブタイトルはつかない) どの作品にもピンとくる、心に触れる何かがありました。騒々しい一連の出来事が終わったあとには、一抹の寂寥感。 それは哀愁でも虚無感でもない、白々と明けていく夜を惜しむような、名残惜しさでした。 『ロサンゼルス』 若いタクシードライバー(ライダー)と、その客(ローランズ)のひと時の会話。 素人対象にスカウトの仕事をしている乗客が、飾らない個性を持った運転手に惹かれていく―――。 偶然出会ったふたりが、何気なく交わす会話が素敵です。 若さ溢れる一番脂が乗っていた頃のノニーを、抜群の存在感で見つめるジーナの落ち着いた演技は絶妙でした。さりげないタクシーでの出会いには、ふたりの人生までが透けてみえる。こんな小さなすれ違いから生まれる物語が、地球上には無数にあるのでしょう。 『ニューヨーク』 東ドイツから移民してきたタクシー運転手のヘルムートは、まともに運転できず片言の英語しか話せない男。みかねたお客のヨーヨー(エスポジート)は、自らハンドルを握りブルックリンへとタクシーを走らせるのでした―――。 偶然道端で出会ったヨーヨーの義妹アンジェラ(ペレス)を交え、超毒舌な会話がタクシーを飛びかいます。楽しげにそれを見つめているヘルムートは、国では道化師だったという。 兄妹がどんなに毒づき喧嘩しても、みんな中身は善良。大都市にやってきたヘルムートにとって、なにもかもが新鮮で、この街が身近に感じるのでした。 やがて、ヨーヨーの家に着き、別れを告げて、再び車を走らせるヘルムート。ほんの少しだけ運転も英語も上手くなった彼の目に映るのは、鮮やかで新鮮だった景色の真実の色。荒んだ道に、救急車のサイレンが鳴り響き、諍いが耐えない街角が広がっている・・・。 ヘルムート役には、名優アーミン・ミューラー・スタールが好演しています。 『パリ』 コートジヴォアール人運転手、イザーク(バンコレ)のタクシーは、盲目の若い女(ダル)を乗せる。白目を剥いた見えない目で、化粧し、道を当て、運転手の出身まで当ててしまうお客に、イザークは深い興味を覚えるのでした。 ロワーズ河岸までの短いドライブの間に、根掘り葉掘り盲人への疑問を投げかける彼。不快そうに答える女。 色も恋人も映画もすべて、肌全身で感じて理解する。そんな信じがたい感覚は、見えている我々の目よりずっと確かなものかもしれない・・・・。 ベアトリス・ダルがいかにも妖しく美しく、これぞパリという一話が見事でした。 『ローマ』 いつでもマシンガントークな敬愛するベニーニ。こちらでもその役どころは変わりませんでした。この人を、キライな人は徹底的に苦手だろうと改めて感じながら・・・楽しみました。 運転手ジーノ(ベニーニ)は、神父(ボナチェッリ)を乗せたのをいいことに、勝手に懺悔を始めます。破廉恥な過去の懺悔に、心臓の弱い神父は息が詰まり、ついには息絶えてしまうのです ベニーニの話し振りに、まったく厭らしさがないのは救い。ただただ滑稽で、いい加減お喋りやめなよ!と、突っ込みたくなること請け合いな、彼らしい短編になっています。 『ヘルシンキ』 雪の街で運転手ミカ(ペロンパー)は、酔いつぶれた男アキと、同僚の労働者2人を乗せます。酔ったアキの不運な1日をさもありなんと語って聞かせる2人に、ミカは自分の体験を語り始めるのでした・・・。 未熟児で生まれた我が子の悲しい物語に、労働者たちは涙を流しながら耳を傾けます。 人の不運なんて、見た目ではわからない。そっと胸の支えを吐き出すように、淡々と語るミカがしんみりと最後を飾ります。 白々と明けていく空、新しい朝が来た希望とともに、名残惜しさを引きずりながら夜は終わるのでした。 トム・ウェイツの歌が作品にドンピシャリ。最高に個性的な歌、CDが欲しくなる 監督・製作・脚本 ジム・ジャームッシュ 撮影 フレデリック・エルムズ 編集 ジェイ・ラビノウィッツ 音楽 トム・ウェイツ 出演 ウィノナ・ライダー ジーナ・ローランズ ベアトリス・ダル ロベルト・ベニーニ アーミン・ミューラー=スタール ロージー・ペレス ジャンカルロ・エスポジート マッティ・ペロンパー イザック・ド・バンコレ (カラー/128分/アメリカ製作/NIGHT ON EARTH) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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