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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:中国映画
『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督によるラブストーリー。 レンタルにて鑑賞、ほんとうは映画館でみたかったなぁ。 (あらすじ)1942年、日本軍占領下の上海。ごく普通の女子大生チアチー(タン)は、抗日運動に心血を注ぐクァン(ワン)に秘かな恋心を抱き、行動を共にするうち感化されていく。やがてチアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イー(トニー)に近づき暗殺を遂行する危険な任務を与えられる。さっそく身分を偽りイー夫人に接近し、冷徹で異常なほど用心深いイーを誘惑する機会を窺うチアチーだったが・・・。 誘われるままに抗日運動に参加したチアチーの運命は、その瞬間からすでに動き出している。暗殺するべくイーと出会い、それなのに惹かれていく、いつしか彼を愛してしまう。 そしてまたイーも、誰一人として信じない孤独の中で、チアチーだけは信じ愛してしまう。 物語は現在から、4年前の過去へと遡って、学生たちの青い青春の一幕が描かれる。そして冒頭のシーンはラストへの序章だった―――。 過去の未熟な暗殺計画が、チアチーの運命を変えていくのが悲しい。 階級夫人と偽ってイーに近づいたが為に、泥沼にはまっていくのは仲間の誰にも予想しえないことだった。 誘惑にのったイーを騙し続けるために、ついにチアチーが貞操さえ捨てなければならなくなる展開は辛い。無邪気で純情な娘ではいられなくなっていく彼女の苦しみも。 イーの邸に出入りする極度の緊張も、演じることへの疲れも、すべてが彼女を狂わせていく。 そして、本気でイーに惹かれ始めたとき、新たな苦しみと、悦びが生まれるのだ―――。 チアチーに想いを寄せていたクァンの、後悔もまた痛い。すべてが遅く、取り返しはつかない――。 学生時代の計画が悲劇に終わったあと、再び工作員としてイー暗殺計画に巻き込まれていく後半。 3年後のチアチーとイーの再会で、烈火のごとく二人の愛には火がつく。 世間を騒がせた大胆な性描写は、デュラスの『ラマン』、マーク・フォースターの『チョコレート』、ミンリャンの『西瓜』と同じくらい不可欠だったと思う。体とともに心を許し、警戒心を解き、その存在を愛し合う二人の姿は、理屈ぬきで切ない。結末がどうあれ、ものすごく切ないものだった。 これは純愛の映画。 恋愛もののトニー・レオンは、しつこいけどやっぱり好きだー(笑) 日本の犬である、殺しや拷問さえいとわない冷酷さも、孤独も、全部ひっくるめていい男だった。トニーファンには必見です。 さきに名前を挙げた作品のなかの、『西瓜』『ラマン』そしてこの『ラスト、コーション』、アジアにしかない愛の情景というものがあって、それが本当に魅力的に映る。 ちなみに、チアチーを演じたタン・ウェイは無名の新人。大胆な濡れ場を潔く演じているわりに顔は幼くて、仕草も洗練された動きではないのだけど、表情と笑顔がとっても魅力でチャーミングな人だった。 監督 アン・リー 原作 チャン・アイリン 『ラスト、コーション 色・戒』 脚本 ワン・フイリン ジェームズ・シェイマス 編集 ティム・スクワイアズ 音楽 アレクサンドル・デスプラ 出演 トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン ジョアン・チェン (カラー/158分/中国=アメリカ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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