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行きかふ人も又

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2008.11.01
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カテゴリ:アメリカ映画

  【あらすじ】 ニューヨーク。底辺でもがき苦しみながら人生を送っていたボクサー(スミス)が、ギャングのボス(シルヴェラ)から、向かいのアパートに住むナイトクラブのダンサー(ケイン)を守ったことから命を狙われるようになる。


 キューブリック、27歳のデビュー作。その前にドキュメンタリーを撮っていて、こちらが商業映画初めての作品。人生で12本しか映画を遺さなかった大好きなキューブリック、こちらですべての監督作品を観ることができた。
なにに驚かされるかといったら、カメラワーク、内容、斬新さのすべてに。奇才の芽は、すでに出ていた!

 低迷中のボクサー、ビンセントは、窓から見える向かいのアパートの女性を気にしている。同じようにダンサーのデイビーも、向かいに見える頑強そうな男が気になっている。
ある日、別れ話のもつれからデイビーは情夫に暴力を振るわれ、その悲鳴を聞きつけたビンセントが助けに入る。二人は知り合うべくして知り合うのだった―――。しかし、恋に落ちたその日から、ふたりはギャングに命を狙われ始める。

KubrickKillerKiss.jpg image.jpg



物語にめずらしいところはないけど、立派なフィルム・ノワールとして、安定したスリルと斬新な手法で見せてくれる。
鏡に映った窓越しの女。伸びる影、光。冒頭ボクシングシーンのカメラワーク。すごいとしかいいようのないデビュー作だった。
今回観たのは日本公開時にカットされた24分を含む完全版。無駄なものは一切ない。多少主人公の独白が説明くさく感じるけれど、1時間の短尺と資金の都合等々あったろうし、仕方がないのかもしれない。

ちょっとしたすれ違いで、ビンセントのメネージャーが誤殺される件の、さりげなさが素晴らしい。屋上を縦横無尽に駆け、ギャングから逃げる中盤の絶景ロングショットも素晴らしい。そしてマネキン工場でのボスとの最後の死闘は、いつまでも語り継がれるに相応しい見応えだった。
マネキンを取り入れただけで、ラストシーンの不気味さは倍増した。なんともすごい絵面だった。後に与えた影響もきっと大きい。

面白いと思ったのは、デイビーという女性だ。彼女が語った、家族にまつわる悲しい記憶と孤独が、絶妙にあとに響いてくる。ギャングに捕らえられたとき、助けにきたビンセントが不利になった途端、すぐさま寝返ってしまうデイビー・・・。自分を庇護してくれる相手に依存するしかない生き方は、彼女の悲しい性を感じさせる。
けして陽のあたる場所にはいない二人のハッピーエンドは、KILLER'S KISSという原題のように、ちょっぴりダークなのだった。



監督・撮影・編集  スタンリー・キューブリック
脚本  スタンリー・キューブリック  ハワード・O・サックラー
音楽  ジェラルド・フリード
出演  フランク・シルヴェラ  ジャミー・スミス  アイリーン・ケイン
ジェリー・ジャレット  ルース・ソボトゥカ

(モノクロ/67分/完全版)







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Last updated  2008.11.02 14:44:28
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