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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:アメリカ映画
【あらすじ】 ニューヨーク。底辺でもがき苦しみながら人生を送っていたボクサー(スミス)が、ギャングのボス(シルヴェラ)から、向かいのアパートに住むナイトクラブのダンサー(ケイン)を守ったことから命を狙われるようになる。 キューブリック、27歳のデビュー作。その前にドキュメンタリーを撮っていて、こちらが商業映画初めての作品。人生で12本しか映画を遺さなかった大好きなキューブリック、こちらですべての監督作品を観ることができた。 なにに驚かされるかといったら、カメラワーク、内容、斬新さのすべてに。奇才の芽は、すでに出ていた! 低迷中のボクサー、ビンセントは、窓から見える向かいのアパートの女性を気にしている。同じようにダンサーのデイビーも、向かいに見える頑強そうな男が気になっている。 ある日、別れ話のもつれからデイビーは情夫に暴力を振るわれ、その悲鳴を聞きつけたビンセントが助けに入る。二人は知り合うべくして知り合うのだった―――。しかし、恋に落ちたその日から、ふたりはギャングに命を狙われ始める。 物語にめずらしいところはないけど、立派なフィルム・ノワールとして、安定したスリルと斬新な手法で見せてくれる。 鏡に映った窓越しの女。伸びる影、光。冒頭ボクシングシーンのカメラワーク。すごいとしかいいようのないデビュー作だった。 今回観たのは日本公開時にカットされた24分を含む完全版。無駄なものは一切ない。多少主人公の独白が説明くさく感じるけれど、1時間の短尺と資金の都合等々あったろうし、仕方がないのかもしれない。 ちょっとしたすれ違いで、ビンセントのメネージャーが誤殺される件の、さりげなさが素晴らしい。屋上を縦横無尽に駆け、ギャングから逃げる中盤の絶景ロングショットも素晴らしい。そしてマネキン工場でのボスとの最後の死闘は、いつまでも語り継がれるに相応しい見応えだった。 マネキンを取り入れただけで、ラストシーンの不気味さは倍増した。なんともすごい絵面だった。後に与えた影響もきっと大きい。 面白いと思ったのは、デイビーという女性だ。彼女が語った、家族にまつわる悲しい記憶と孤独が、絶妙にあとに響いてくる。ギャングに捕らえられたとき、助けにきたビンセントが不利になった途端、すぐさま寝返ってしまうデイビー・・・。自分を庇護してくれる相手に依存するしかない生き方は、彼女の悲しい性を感じさせる。 けして陽のあたる場所にはいない二人のハッピーエンドは、KILLER'S KISSという原題のように、ちょっぴりダークなのだった。 監督・撮影・編集 スタンリー・キューブリック 脚本 スタンリー・キューブリック ハワード・O・サックラー 音楽 ジェラルド・フリード 出演 フランク・シルヴェラ ジャミー・スミス アイリーン・ケイン ジェリー・ジャレット ルース・ソボトゥカ (モノクロ/67分/完全版) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.11.02 14:44:28
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