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2008.11.12
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カテゴリ:フランス映画

 【あらすじ】 1960年代のとあるフランスの田舎町。小学校教師のジャック(ヴィルレ)は週末いつも赤鼻のピエロとなり、人々を笑わせている。そんな父を14歳になる息子は嫌で嫌でたまらないのだった。むっつりと父のピエロ姿を眺める彼に、ジャックの親友アンドレ(デュソリエ)は、父がピエロになったワケを話して聞かせる―――。


 ドイツ占領下、第二世界大戦末期のフランス。若き日のジャックと親友のアンドレは、ラジオから流れるレジスタンスたちの勇気に打たれていた。そんなとき、偶然手に入れた爆薬で、ポイント切り替え所の爆破を計画するのだった。
素人ながらも計画を成功させて、興奮気味の二人は祝杯をあげるが・・・・。突然ドイツ軍が現れて、ほかの人質2人と共に深い穴の底に突き落とされ捕らえられてしまう。
そればかりか、ポイント切り替え所の中には同胞の鉄道員フェリクス(ガリヴィエ)がいて、大怪我を負わせていたのだ。
猶予はわずか一日。罪を認めればあとの二人は釈放するといわれても、なかなか思い切れないまま、絶体絶命の時間を過ごす彼らを救ったのは、善良なひとりのドイツ兵と、負傷したフェリックスだった・・・・。

穴の上に突然現れたそのピエロは、彼らに笑いと食料を届ける。おどけて恐怖を取り払い、生きた心地を取り戻してくれる。そのピエロは、かつてフランスに暮らしていたというドイツ兵だった。
道化師は存在自体に隠れた悲しさを持っていて、それを上手にみせてくれる。笑顔の裏に隠された強い意思、人を笑わせることで与えられると信じる生きる力。それは自らの命を捨ててでも守りたかった、道化師としてのプライドだった。
人を笑わせることが天命の、悲しい道化師。だれど、この衝撃の出会いは、生き残った彼らにかけがえのない感情を残すことになる。滑稽な姿に皆が笑う時、彼らは思い出して涙するのだ。命がけで守ってくれた、その笑顔の裏の悲しさと誇りを思って。
そして、人生には笑いが必要なのだと、教えてくれる。

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4人の男たちの人生を変えた転機を、回想形式で描いた良質な小品だった。大作にだって仕上げられそうな物語を、登場人物少なく、低予算で、スケールを抑えて、短尺に仕上げた手腕がすごい。親しみ持てる主人公たちに、親近感も湧く。
主演は、けして美男子とは言いがたいジャック・ヴィルレ。先日の『奇人たちの晩餐会』が記憶に新しい。それにしても回想シーンに若返った感じがなくて・・・(笑)まったく変わらないんだけど、そんなの言いっこなしか?(笑) 愛すべき主人公だった。

冒頭にジャックの妻として登場する、二人が恋した女性ルイーズ(イザベル・カンドリエ)とのエピソードも素敵だ。夫を見つめる眼差しの温かさ。回想形式にすることで浮かび上がってくる、さらなる感動の余波がいい。
ドイツ占領下のフランスで起こった、悲しくも心震わせる良質な物語だった。



監督  ジャン・ベッケル
製作  ルイ・ベッケル
原作  ミシェル・カン 『ピエロの赤い鼻』
脚本  ジャン・ベッケル  ジャン・コスモ  ギョーム・ローラン
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル
出演  ジャック・ヴィルレ  アンドレ・デュソリエ  ティエリー・レルミット
ブノワ・マジメル  シュザンヌ・フロン

(カラー/95分)






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Last updated  2008.11.13 22:58:49
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