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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イタリア映画
すべてセットで撮影されたという、ヴィスコンティの悲恋物語。 原作はドストエフスキーの短編小説で、意外にも軽やかでさえあるメロドラマだった。 主人公は夢想家らしいので、本編の青年マリオ(マストロヤンニ)は原作のイメージと違うのでしょう。夢想家に見えるのは、かえってナタリア(シェル)のほう。 彼女の気性や不思議ちゃんな感じの行動が、良くも悪くも作品を左右している。 名優マストロヤンニが哀愁漂う背中で、最後に魅せてくれなければ、違った映画になっていたはずです。 ある夜、赴任先の港町で、マリオは橋に佇み泣いているナタリアと出会う。 不慣れな町で孤独だったマリオは、いっぺんに恋に落ちるのだが、ナタリアはじつは帰らぬ恋人を一年も待ちわびて泣いていたのだった。それでも一途に愛するマリオに、彼女の心は傾くが・・・。 残酷な結末が胸を痛くする。 舞台はほとんどが夜だ。 彼女は「一年後の夜、この橋の上で会おう」という約束を守って、いつも待ちわびているから、マリオが彼女と会えるのも夜。 深い別れの悲しみに耐え、狂わんばかりに恋しい思いをしているナタリアは、神経衰弱気味で心の浮き沈みが激しい。 たんに、むかしのイタリア映画によく見られるオーバーな演出なのかもしれないけれど、そのテンションについていくことはできなくて、感情移入するのはマリオに対して。この作品の主人公は彼。 すべてがセットだというモノクロの映像は、なかなかのものだった。‘物語’チックでとてもいい。(映画自体はそれほどでもないけど) 後半部分に降る雪は文句なしに美しい! モノクロの映画の良さは、黒と白でごまかされた細部の認識を、美化されたまま受け入れられるところかもしれない。 これがもしカラーだったら、雪はもっとニセモノに見えているだろうし、ここまで美しくはなかったはず。 いままで観てきた映画のなかで一等というくらいに、素敵な雪のシーンだった。 愛に破れたマリオに優しく寄り添うワンコが一匹。 哀愁の背中がマストロヤンニの名優ぶりをみせつけていた。 監督 ルキノ・ヴィスコンティ 原作 フョードル・ドストエフスキー 脚本 ルキノ・ヴィスコンティ スーゾ・チェッキ・ダミーコ 音楽 ニーノ・ロータ 出演 マルチェロ・マストロヤンニ マリア・シェル ジャン・マレー (モノクロ/107分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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