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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:アメリカ映画
カルト・ムービーとして迎えられた、リンチ監督の長編デビュー作。白黒映像の中に展開される悪夢と狂気の幻想世界。フィラデルフィアの工業地帯、印刷工の男がガールフレンドとの間に奇妙な赤ん坊をつくり、次第に悪夢の世界に入り込む―――。 リンチの原点ともいうべき映像的魅力に溢れた傑作。(映画大全集より) いまのわたしには、観るべきではなかったかもしれない。 内容をちゃんと知らないままに、いつか観たいと思ってきた。短尺だったのでつい選んでしまったけれど、結果、状況はどうあれ観てよかった。こういったアブナイ作品にも共感を持ち楽しめる自分自身は変わるわけじゃないのだ。 悪夢。悪夢としか言いようのない世界が、忽然と現れるのに、なぜ面白いと感じるんだろう。 主人公が顔を歪めれば、同じように観客の顔も歪むような出来事ばかりが起こる。 不快でグロテスクなのに、怖いもの見たさで見続けていくうち面白くなっている。 ずば抜けて幻想シーンに世界観のある傑作だった。 髪型のせいでことさら大きな頭をした不恰好な主人公は、ガールフレンドとの間に突然、奇妙な赤ん坊を授かる。 まるで鳥小屋のような自宅で赤ん坊を育て始めるが、妻はまもなく発狂寸前で家を飛び出してしまい、残された男はいつか悪夢に取り込まれ、狂気と幻想の狭間を彷徨っていく―――。 台詞も説明も排除して、斬新な映像で怖ろしい悪夢が延々と表現されていく。 現実との間には大きな隔たりがあるというのに、実在感のある幻想は、そんなものを飛び越えて迫ってくるから怖ろしい。 愛用する「映画大全集」でシュールレアリズムをホラー映画として蘇らせたとあったけれども、たしかに、ブニュエルとダリの『アンダルシアの犬』をすぐに思い浮かべた。 他に思い出したのはヤン・シュヴァンクマイエルの『ルナシー』『オテサーネク』、ベルイマンの『野いちご』。 共通するものがたしかにあるみたい。そしてどの作品もわたしは好きだということ。 上の写真の男は、冒頭と最後ラストに登場した(まるで塚本晋也の鉄男!)、いったい何者だったのだろう。 堂々とした存在、無機質で美しい。見てくれからは、主人公と対極にある印象を受けたから、もうひとりの主人公だったのだろうか。 なにを表していたのかわからないからこそ知りたい。この衝動は後の『マルホランド・ドライブ』なんかでもそのまま残っている、リンチらしさといえるのかもしれない。それからエロティックさ、鋭さも。 ぽっぺのぷっくらした女の子が舞台で踊るシーンが印象に残る。 あれもなんだったのか、単なる幻想の一部だったのかはわからないけれど、深読みすればキリがないから単純に楽しんだ場面だった。 深読みしすぎて、それで映画を楽しめないのではつまらない。『マルホランド・ドライブ』なんていまだによくわかっていないけれど、それでも面白い映画だった。 監督・脚本・製作 デヴィッド・リンチ 撮影 フレデリック・エルムズ 音楽 ピーター・アイヴス 出演 ジョン・ナンス シャーロット・スチュワート アレン・ジョセフ (モノクロ/90分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.01.20 22:28:26
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