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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:中国映画
2009年の完成に向けて着々と工事が進む長江の三峡ダム建設プロジェクト。中国の一大国家事業により水没する運命にある古都・奉節(フォンジェ)を舞台に、時代の大きなうねりの中で繰り広げられる名も無き人々の人生を見つめたドラマ。 近代化の加速する中国と、21世紀とは思われぬような古都・奉節。 この土地に、音信不通の伴侶を探しにやってきた2人の男女の物語を通して、中国のいまを詩情豊かに描き出す。 淡々としていて、静かで、何度も何度も気を失いながら見終えた。 長江やどこまでも広がる廃墟の情景は、中国の広大さを感じるには十分で圧倒的だ。自然豊かな素朴な画面にリラックスしてしまうのか、眠くてしようがないのは長回しのせいかもしれない。 そんなのんびり画面に、ちょっとした監督の意図で、UFOやロケットが突如現れるので、オチオチしていられないのだった。 思い切りリアルな中国の現在を感じながら、都市と辺鄙な町にある大きな隔たりが不思議で、そこの隙間にまったく違和感なく、未確認飛行物体が投入される。 炭鉱夫ハン・サンミンも、看護師のシェン・ホンも、ダムの下に沈んでいく古都を訪れ、働いたり知人の協力を得たりしながら、懸命に音信不通の連れ合いを探している。 遠い土地に来て初めて気づくことや経験することの戸惑いは、そのまま近代化の波にのまれ、住み慣れた土地を追い出される人々の困惑に通じるところがあって、どうであれ生きている人々の日々の営みが哀愁持って描かれていく。 近代化とはいっても、廃墟となったビルや家々を壊すのは、ハンマーを持った人の手だ。 このあたりの遅れには驚きを隠せない。 本編にも登場する、工事中の怪我や事故死。これが三峡ダム工事の現状なのだとしたら悲しい。 まさに哀歌の「哀」だ。 前向きに生きていく主人公たちとはうらはらに、物悲しい気持ちになる作品だった。 監督・脚本/ジャ・ジャンクー 撮影/ユー・リクウァイ 音楽/リン・チャン 出演/チャオ・タオ ハン・サンミン ワン・ホンウェイ リー・チュウビン (カラー/113分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.10 22:45:44
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