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カテゴリ:フランス映画
かつて馬肉屋をしていた男は刑務所から出所後、愛人のもとで暮らしていたが、何もかもに嫌気がさし、施設に入っている娘に会うためパリへと向かう。 施設から娘を連れ出し、ふたりは安宿に入るのだが、鬱屈した男は取り返しのつかない行為に及んでしまう―――。 『カルネ』の続編で、監督・脚本は同じくギャスパー・ノエ。 以前、松本人志の「シネマ坊主」を読んだとき気になって、オンラインリストに追加していた作品。 前作『カルネ』は未見。 乱暴で猥言ばかりの主人公の饒舌がすごい。 多くのフランス映画が描かない、国の暗部を描いているけれど、それがいかにもフランス的だったりするのでおもしろい。 人間はみんな利己的と言った男の第二の人生は、身重の妻に支配されて絶望の色。 新しい馬肉店を開こうにも、財産は妻が握っていて、わずかさえも自由にはできない情けなさ。 いつしかなにもかもが嫌になり、妻をさんざん殴ったあげく家を飛び出し、銃片手に唯一の希望である娘に再会するため、トラックを拾いパリを目指すのだが・・・。 はみ出し者の中年男が辿り着いた境地は、ノーマルのわたしにはたしかに共感しがたかった。 けれどあと20年生きていく意味を探したくなる気持ちはわかる。 誰だってなんのために生きるのか、理由がなければ辛いのだ。 冒頭に、駆け足で見せられる前作のダイジェストは、男の過去を教えてくれて、それなりに屈折した人生のわけがわかるようになっている。 筋違いのこじつけで、ドイツや富裕層を憎悪したり、娘に手を出すなんていう醜猥極まる行為も、男の開き直りを前には怒りが湧かなかった。 知能の弱くして生まれてきたらしい娘は、はっきりと感情を表に出すことはない。 ただただ男の独白で物語は続いていく。 「これから30秒以内に映画館を出たほうがいい」 思わせぶりな字幕のあとに繰り広げられるカウントダウン後のおぞましい光景も、死を覚悟した男が出した答えも、やっぱりどうしようもない。 普段ならば、そんな主人公をいとおしく思えることが多いけれど、こちらは違っていた。 モラルなんて、所詮人間同士の決め事。 自分を徹して生きるには利己的であるしかないのだろうか。 監督・脚本・撮影・編集/ギャスパー・ノエ 出演/フィリップ・ナオン ブランディーヌ・ルノワール フランキー・バン (カラー/95分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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