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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:アメリカ映画
70ミリ画面による空前絶後の15分にわたる戦車競争シーンが世界中を湧かせた、スペクタクル映画の金字塔。 ローマ帝国支配化、イェルサレムの名門の青年ベン・ハー(ヘストン)と新任総督の指揮官メッサラ(ボイド)の因縁の対決を描く―――。(映画大全集) 製作日数6年半、総出演者数5万人、制作費54億円というのだからすごい。 6年の歳月というと、ほんとうに長い。大好きな『天井桟敷の人々』でさえ、戦時下で4年だというから。 ローマ帝国支配下、ハーの元に、数年ぶりに再会する旧友メッサラが訪ねてくる。 今では総督の指揮官となっていたメッサラは、ユダヤの人々を帝国の支配下に置こうとし、ふたりの友情にヒビが入っていく。 メッサラの謀略によって母と妹が拘束され、彼自身も奴隷船送りとなったベン・ハーは、そこで命を救ったローマの将軍の養子となり、生きて故郷へ帰り着くが・・・。 戻った彼を待っていたのは、憎きメッサラとの対決と、家族が獄中で死んだという悲しい知らせだった―――。 ハーの運命が数奇に満ちているところがおもしろい。 物語が始まって間もなく、ナザレのイエスが誕生して、磔にされるまでの年月とハーの半生が、自然な形で並行して描かれていくのが、とてもいい。 砂漠で命を落としそうになった時、そっと水を差し出して彼を救うイエス。神ではなく人間として存在する、その最期が、主人公の人生と同じくらい大きく響いてくることが意外な良さだった。 ハーが何者かに生かされているように描かれることで、ただのスペクタクル映画ではない、不思議な神々しさのある、たとえば『十戒』のような雰囲気も備えていた。 映画史に残るといわれている、戦車競争シーンの臨場感は白眉。 どうやって撮ったのだろうスピード。15分の長さは、これでもかというほど白熱のシーンに見入らせてくれた。 白馬と心通わすハーの手綱と、車輪に細工した戦車でムチ打ち走るメッサラ。かつては親友だったはずのふたりが、いまではまったく違った戦い方をする。 命がけの背景には、後の世に迫害されるユダヤ人たちの運命まで透かして見えるようで、ハーが死闘に勝利した時、民族挙げて喜ぶ姿が印象的。 終盤、ハーは死んだと思っていた母親と妹が、じつはまだ生きていることを知る。 彼女たちは長い投獄の間に死病に罹り、死の谷で絶望の中を彷徨っていたのだ。 惨めな姿で会いたくないと身を隠した彼女たちを探し出し、ついには、家族は再会を果たす。 ラストで、余命幾ばくもない死病の妹を抱え、ハーは救いを求めてイエスの元を訪れる。 しかし時すでに遅く、彼らが見たものは、罪深き人々の身代わりに磔となるためゴルゴダの丘へ歩みを進めるイエスの姿だった・・・。 なんとも劇的なラストだ。 『パッション!』とまではいかないけれど、歴史上の大場面が圧倒的なリアリティで再現されて、約4時間もの一大叙事詩に相応しい幕が下りる。 キリストの死によって奇跡が起こり、母と娘の死の病は消えていく―――。 この有名な映画を、いままで単純なスペクタクル巨編かと思っていたわたしが恥ずかしい。 それなりに時代は感じるけれど、製作当時から半世紀経った今も、まったく色褪せない傑作でありました。 監督 ウィリアム・ワイラー 原作 ルー・ウォーレス 脚本 カール・タンバーグ 撮影 ロバート・L・サーティース 音楽 ミクロス・ローザ 出演 チャールトン・ヘストン ジャック・ホーキンス ヒュー・グリフィス スティーヴン・ボイド (カラー/222分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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