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2009.05.09
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カテゴリ:アメリカ映画

 ヘンリー・ダーガーを知ったのは、遅まきながらこの映画がきっかけでした。

1973年にひっそりとこの世を去り、その後に多数の作品が発見されて、急速に評価を得た孤高のアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガー。
その謎に包まれた特異な生涯と作品世界に迫るアート・ドキュメンタリー。

生涯にわたって孤独の世界に身を置いたダーガーは、15,000ページを越える小説『非現実の王国で』を遺しました。
彼の生きる拠り所だった奔放な妄想世界に迫ります。


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 物語は欠かせなくて、心の欲求にまかせ、小説や映画から吸収して暮らしている私。
それを自らの手で、膨大な量を、孤独のうちに創造したというダーガー氏は、すごい人です。

孤児院や知的障害児施設で過ごした、幼少期から青年期にかけてのつらい経験が、後にひきこもりや人嫌いとなって表れたのでしょうね。

苦しんだからこそ生まれた『非現実の王国』。そこで生きることが、彼にとっての安らぎだった―――。
だとしたら、全身でもってそのファンタジーのなかに飛び込んで、見てすべてが知りたいと、すごく思います。

本作ではテンポが速すぎて、じっくりと絵を眺めることができないので、興味を持たれた方はきっと実物が見たくなるし、それができなければ本が欲しくなる。
さっそく買ってみると、色使いやラフな線が大好きでした。
その独自の手法も興味深いものだし、内容については本編でわかりにくいので、やはり本が必要です。


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物語の主人公は少女たちでした。
畏怖するような、崇めるような態度は、まさにナボコフの『ロリータ』の世界。
けれどなぜその少女たちに、ペニスをつけて描いたのだろう。

両性具有化して完全なる存在にしたかったのか、それとも穢れのない存在にさらに神をも重ねて、男性であることが必要だったのか―――。
ダーガーにとってのは、すごく興味深いものでした。

強制的に教会へと通わされた幼き日の思い出や、恐ろしいシスターの記憶・・・。
いつしか神を憎むようになったのに、それでも信心深さを失わず、晩年までずっと教会に通っていたという。

神を冒涜する言葉を吐きながら、なおも聖者でありたいと願う矛盾は、キリスト教徒ではない私にとって、理解しがたいものだけれど、火事の記録や、その日一日の天気について克明に綴ったという行動は、少しだけ理解できるかもしれない。

ちなみに、テーマ曲は大好きなトム・ウェイツ。この作品にすごく似あっているのがウレシイです。



●  ●  ●  ●



監督・製作・脚本  ジェシカ・ユー
音楽  ジェフ・ビール
ナレーション  ダコタ・ファニング

(カラー/82分)








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Last updated  2011.10.02 00:26:42
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