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カテゴリ:アメリカ映画
ヘンリー・ダーガーを知ったのは、遅まきながらこの映画がきっかけでした。 1973年にひっそりとこの世を去り、その後に多数の作品が発見されて、急速に評価を得た孤高のアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガー。 その謎に包まれた特異な生涯と作品世界に迫るアート・ドキュメンタリー。 生涯にわたって孤独の世界に身を置いたダーガーは、15,000ページを越える小説『非現実の王国で』を遺しました。 彼の生きる拠り所だった奔放な妄想世界に迫ります。 物語は欠かせなくて、心の欲求にまかせ、小説や映画から吸収して暮らしている私。 それを自らの手で、膨大な量を、孤独のうちに創造したというダーガー氏は、すごい人です。 孤児院や知的障害児施設で過ごした、幼少期から青年期にかけてのつらい経験が、後にひきこもりや人嫌いとなって表れたのでしょうね。 苦しんだからこそ生まれた『非現実の王国』。そこで生きることが、彼にとっての安らぎだった―――。 だとしたら、全身でもってそのファンタジーのなかに飛び込んで、見てすべてが知りたいと、すごく思います。 本作ではテンポが速すぎて、じっくりと絵を眺めることができないので、興味を持たれた方はきっと実物が見たくなるし、それができなければ本が欲しくなる。 さっそく買ってみると、色使いやラフな線が大好きでした。 その独自の手法も興味深いものだし、内容については本編でわかりにくいので、やはり本が必要です。 物語の主人公は少女たちでした。 畏怖するような、崇めるような態度は、まさにナボコフの『ロリータ』の世界。 けれどなぜその少女たちに、ペニスをつけて描いたのだろう。 両性具有化して完全なる存在にしたかったのか、それとも穢れのない存在にさらに神をも重ねて、男性であることが必要だったのか―――。 ダーガーにとっての神は、すごく興味深いものでした。 強制的に教会へと通わされた幼き日の思い出や、恐ろしいシスターの記憶・・・。 いつしか神を憎むようになったのに、それでも信心深さを失わず、晩年までずっと教会に通っていたという。 神を冒涜する言葉を吐きながら、なおも聖者でありたいと願う矛盾は、キリスト教徒ではない私にとって、理解しがたいものだけれど、火事の記録や、その日一日の天気について克明に綴ったという行動は、少しだけ理解できるかもしれない。 ちなみに、テーマ曲は大好きなトム・ウェイツ。この作品にすごく似あっているのがウレシイです。 監督・製作・脚本 ジェシカ・ユー 音楽 ジェフ・ビール ナレーション ダコタ・ファニング (カラー/82分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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