|
テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イギリス映画
テリー・ギリアム監督は、この年、2本の映画を撮っている。本編と、もう一本は『ブラザーズ・グリム』。 ハリウッドで撮った『ブラザーズ・グリム』は、パッとしない出来栄えだった。 やはり『ローズ・イン・タイドランド』に、より深く関わっていたからなのだろうなァ。こちらの方が、断然おもしろかった。 主人公は『不思議の国のアリス』が大好きな、少女ジェライザ=ローズ。 両親は2人ともヤク中で、ある日ついに母親が死んでしまう。父親は彼女を連れて、故郷の草原に立つ、空き家となったオンボロ実家に住みつく。 しかし、父親もまたクスリを打ったまま動かなくなり・・・ジェライザ=ローズと親友のバービー人形だけが、取り残されるのだった―――。 主演の少女の美しさが際立つ、不気味でキッチュなダークファンタジー。 他と一線を画するオリジナリティーがキラリと光る。ギリアム氏の審美眼はすごい。目を離せない、残酷で純粋な美しさが広がっていった。 たったひとり、海とも陸ともつかない「TIDELAND(干潟)」に取り残されたローズだけれど、その強さったらない。 ヤク中の両親に育てられた、アブノーマルなローズには、二人の死に嘆き悲しむという反応すらなくて、親友のバービー人形たちと、外に広がる世界を探索する、新しい毎日が始まるだけ。 中盤。草原の向こうに住む、デルと弟のディケンズに出会う。 知恵おくれのディケンズと、密かに会い、恋をしてしていく彼女は、10歳ですでに色っぽかった。少女だけがもっている女性性みたいなものに、すごくハッとさせられてしまう。 しかし、瑞々しい日々は、必ず終わる瞬間を秘めている―――。 均衡の保たれた世界は、いつかは崩壊するし、現実はシビアだ。 父親の死体は、金髪のカツラをかぶせても、化粧でキレイにしても、居間の揺り椅子で静かに腐っていく。それがリアル。 食事も入浴もしないローズが、いつまでも可愛らしいままなのは、思い切り非現実的だけれどね、、、。 まぁ、ファンタジーですからよしとしましょう。 最後に、度肝をぬかれるような方法で、ローズは「幸福」みたいなものを掴む。 悲劇の後、唐突に。 けれど破天荒なローズは、果たして普通の子どもになれるのか―――? 甚だ疑問なラストが、いい意味でイヤな余韻を残した。 監督/ テリー・ギリアム 製作/ ガブリエラ・マルチネリ ジェレミー・トーマス 原作/ ミッチ・カリン 『タイドランド』 脚本/ テリー・ギリアム トニー・グリゾーニ 撮影/ ニコラ・ペコリーニ 音楽/ マイケル・ダナ ジェフ・ダナ 出演/ ジョデル・フェルランド ジェフ・ブリッジス ジェニファー・ティリー ジャネット・マクティア ブレンダン・フレッチャー (カラー/117分/イギリス=カナダ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.10.31 16:55:49
コメント(0) | コメントを書く
[イギリス映画] カテゴリの最新記事
|