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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イギリス映画
ダニー・ボイル監督といえば『トレインスポッティング』『ザ・ビーチ』『28日後...』。 どれも斬新で、絶妙な勢いと、巧みさがあったっけ。アカデミー作品賞を受賞した本作も、圧倒的なうまさだった。 ヒンドゥー語を大事にしつつ、外国語作品にならないよう、前半には英語字幕が投入されている。そんなところも、とてもスマートだ。 インドの国民的人気番組“クイズ$ミリオネア”で、この日、ムンバイ出身の青年ジャマールが、ついに誰も辿り着けなかった、残り1問までやって来た。ところが1日目の収録後に、イカサマ容疑で警察に逮捕されてしまう。スラム育ちの孤児がクイズを勝ち抜けるわけがないというのだ。 執拗な尋問に対し、ジャマールは自らの無実を証明するため、答えを知るに至った、ストリートでの過酷な過去を語り始めるのだった・・・・・・。 クイズ・ミリオネアのドキドキと、二重の回想形式で語られる構成の見事さ! 120分が短く感じられるほど、物語に引き込まれていく。 教育を受けていないはずのジャマールは、なぜ問題の答えを知ったのか。その答えは過去にある。 あの頃のスラムの生活が、あの事件が、あの偶然が・・・いまへと繋がる大切な伏線となっていく。気を逸らさないドラマチックなエピソードのひとつひとつが、瑞々しくて痛々しくて切なくて、たまらない。 詳しい内容は割愛するが、過去が現在に追い付いたとき、物語は、最後の一問を残すのみ。 同時に、ジャマールの一途な恋の行方も、ミリオネアを賭けた運命の行く手とともにある――。 なんて巧いんだろう! 「クイズ・ミリオネア」という番組のいやらしさを、存分に利用した内容もさることながら。出来過ぎなラストは、きっと映画ファンでもうなるはず。往年の名作へのオマージュと、映画愛に溢れていた。 舞台は映画の都ムンバイ。エンドロールでしっかりと、ボリウッドらしいダンスを披露して幕を閉じる、粋な演出。作品全体で、インド特有の生命力とカラフルさと魅力を表現してしまえているところも、素晴らしい。 初恋相手をずっと追い求めているスラムドッグの優男を演じた主演のデヴ・パテルは、時にみせる強い眼差しが、とても魅力的な俳優さんだった。 (カラー/120分/イギリス=アメリカ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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